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「さてと」と言う魔術師の言葉で、辺りに漂っていた気まずい雰囲気は取り払われた。
「ミネリ、一匹捕まえてきてくれないか」
そのように礼御が猫妖怪に指示すると、彼女は「あいあい」と気だるそうに二つ返事をする。
「ちっちゃくて、すばしっこそうだな」
「お前なら平気だろ?」
「まぁ、そうだけどさ」
そう言いながらミネリはぴょんと跳びはね、林に消えていった。
「あの、一体何を捕まえてくるのですか?」
口を開きづらくはあったが、それでも私は自分の興味に素直だった。もはや魔術師はさきほどの私の態度を気にしている様子もなく――少なくとも私からはそう見えた――、優しい表情で答えてくれる。
「雨を降らす要因ですよ。雨を降らさない・・・原因とも言えるかもしれませんが」
「雨を降らす要因って・・・。雨って気象現象でしょ? もしかして雨は妖怪のおかげで降っていたものなのですか?」
そう私が尋ねると、魔術師は「いえいえ」と否定しながら続ける。
「少し言葉足らずでしたかね。雨ってつまりは、上空で水蒸気が冷えて落ちてくるものでしょ。その妖怪は空に水蒸気を放つ存在、のようなモノですかね」
そんなものがいるのか、と私が思っていると、礼御は「もちろんその妖怪のみによって、上空に水蒸気がもたらされるわけではありませんが」と追加で説明をした。
と、そのとき。ミネリが走って行った方向の草木がざわめいた。
まだ数分も経っていないのに一体何があったのか、と私は身構える。隣の魔術師は不安そうな表情一つ見せていない。
どんどんその音は近づいてくる。そして、バッと姿を現したのは―――。
ミネリであった。
・・・まぁ、そうだよね。




