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28話:もやもやした気持ち

展開が少し早いかもです……。

 教科書を片手に授業を進める神崎は神崎先生ではなくて、伯さんで。

 その姿は恰好よくて、思わず見惚れそうになる。

 それは私だけではなくて、他の女生徒もそんな感じだった。

 授業は全く耳に入ってこないし、ただぼうっとする有り様。

 時間が経つのも忘れていて、休み時間のチャイムがなった時は驚いて席を立ちそうになった。



「それじゃあ、ここまで」



 神崎の声と共に授業が終わり、私は真っ先に教卓へ向かおうとしたが……

 神崎の周りには、あっという間に女子の輪が出来て、話せる状態ではなかった。

 溜息をついた私に、麗子が近づいてくる。



「びっくりしましたか?」

「びっくりしたも何も……どうして教えてくれなかったの?」

「それは……その方が面白いと思いましたから」



 にっこりと微笑む麗子を無言で見つめた。 

 麗子ってこんな子だったっけ。



「でも、あの調子じゃ話をするのは難しそうですね……」



 神崎の方を見て、困ったように眉を下げる麗子。私もそちらに目をやった。

 生徒に勉強を教えているのだろうか? 少なくとも、その生徒は勉強目的ではなさそうだけれど。

 爽やかな笑顔を浮かべる神崎は、決して家では見せないであろう表情を浮かべていて、ちょっぴり複雑な気持ちになった。 

 というか、今は一緒に住んでいないから、どんな感じかも分からないだけど。

 どんどん、思考がマイナスになっていく。そんな私を見て、麗子は苦笑した。 



「杏奈さん。すごく気難しい顔になっていますよ」

「えっ?」

「杏奈さんもあそこに混じったらいいじゃないですか」



 きゃっきゃと女子の黄色い声が聞こえる。それには少し気が引けた。

 だって、あの中に入ったら、あの女生徒達の一人になってしまう気がする。

 少し前まで近くに居れると思ったら、また遠くなってしまう。

 ふと、輪の中に居る神崎と目があった。手を振ろうとして、思わず笑おうとしたが、すぐに目を逸らされる。その他人行儀な仕草に、胸がもやもやした気持ちで包まれたのだった。



********** 

 

 ただいま。父のいない静かな家に一言告げた。 

 今日は帰りが遅くなるらしい。最近、仕事が上手くいると聞いた。この辺の地価が上がっているとか。

 返答のない挨拶に心細く感じる。少し広いリビングに人が居ないというのは、真夏のはずなのに肌寒かった。

 妙に寂しい気持ちになるのは、今日の出来事あっての事なのかもしれない。

 神崎の周りに集まる女生徒とか、その女生徒に向ける神崎の笑顔とか、目を逸らされたこととか全部。

 携帯電話があれば、いつでもメール出来るのにな……。ふとそんな考えが頭に浮かぶ。

 もう高校生だというのに、古風な父は携帯電話も持たせてくれない。

 最近、機嫌がいいから今日こそ許してくれるかも……。



「だめだ」



 久しぶりの上目遣いはまんまと打ち砕かれてしまった。

 口を一文字に結んだ父からは固い意志が読み取られる。

 そんな父に苛立ちを感じた。変な所だけ頑固なのだ。



「だって、もう高校生よ?」

「だめなものはだめだ。需要がなさすぎる」

「……需要ならあるわよ」



 新聞に目を向けていた父が、初めてこちらに目をやった。

 お? 手応えあり?



「なんだ」

「ほら、伯さんとも……」



 そう言いかけた時、インターホンの音が私の声を遮った。

 父は逃げるようにして、席を外す。むっとした私は父に何か反論しようと後を追った。

 文句を言おうとした父の顔が気持ちが悪いほど笑顔になったのを見て、私は父の目の前の人を見た。



「こんばんは」

「あ……」

   

 

 思わず声を上げるところだった。

 神崎は玄関にスーツ姿のまま佇んでいた。まさに、仕事帰りという感じだ。

 こんな時間まで学校に居たんだろうか?


 

「神崎さん! どうぞ、上がってください」

「いえ。大丈夫ですよ、迷惑にもなりますし……杏奈を借りてもいいですか?」



 神崎はちらりと私の方に視線を寄越す。

 父が困ったようにこちらを見たので、私は頷いた。

 なんだか断れない感じがしたからだ。というか、私自身も神崎と話がしたかった。



「じゃあ、失礼します」



 前にもこんなことがあったなぁ、と振り返ってみる。 丁度、婚約が決定して、神崎の家へ住む事になった時だ。

 そんな事を考えながらも、神崎に手を引かれて家を後にする。

 家の前には相変わらずの高級車があり、神崎に乗るように促された。

 


「久しぶりですね。元気でしたか?」



 変わらずの神崎にほっとする。今日の事もあって、冷たくされそうで、少し怖かったのだ。



「えーと、元気……なんでしょうか」

「ははっ……俺に聞かれてもな」



 可笑しそうに苦笑されて、腹が立つどころか、胸の動機は早まる一方だった。

 優しく梳かれるようにして髪を撫でられる。

 触れられるのは久しぶりだったので、一瞬本当に心臓発作で死んじゃうんじゃないかと思ってしまった。

    



 


  

  

 

きりが悪くてすみません。

1話に収まりきりませんでした。


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