27話:驚きの再会
翌日には学校に行くこともできた。
顔にはまだ切り傷や痣が少しだけ残っていたが、前ほど痛々しくは見えないだろう。
あれから神崎の家に戻れると思っていたが、神崎はそれを断った。
神崎グループの人が私を狙っているかもしれないということで、自分の傍にいると危険だと彼は告げた。
そんなこともあって、私はまた父の家で過ごすことになった。もとの生活に戻ったのに、心にぽっかり穴が空いたみたいに味気がなかった。
「杏奈さん、すっかり元気がありません」
隣を歩く麗子が溜息をついた。
自分でも呆けた顔をしているのは分かっていた。
それでも、神崎とまた暮らせると思った期待を裏切られたショックは大きい。
「だって、また一緒に暮らせると思ったのに……」
「神崎兄貴のことですか」
さっきまで溜息をついていた麗子がくすりと微笑む。
まるで何もかも見透かされている気がして、恥ずかしくなった。
「きっと逢えますよ。今日にでも、明日にでも、毎日ね」
「えっ?」
「何でもありません。単なる独り言です」
にこにこと微笑む麗子に嫌な予感がした。
何かを企んでいる顔だ。
「あ、先生が来ました。では後程」
「はぁ……」
そういえば、担任はどうなったんだろう。まだ、教頭が?
いやでも、もう決まってもいい頃よね……。
伯さんは辞めちゃってるし、そう思うと、胸がずきんと痛んだ。
すると、後ろの女子が何か騒いでるのが聞こえた。
それどころか、クラス全員の女子が何やらざわざわとし始めている。
おかしい……、さっきの麗子の様子といい、クラスの女子の反応といい、まさか?
ううん、そんなわけ……。
「おはようございます、それでは出席をとりますね」
爽やかな笑顔で入ってきた彼は、紛れもない神崎だった。
しかし、その神崎はマスクもワックスもつけていない素の神崎だった。
眼鏡は前のような度の強そうな分厚い眼鏡ではなく、普通の銀縁眼鏡を掛けている。
後ろの女子はきゃあきゃあと黄色い声を上げていた。
淡々と名前を告げる神崎に、男子はつまらなそうに、女子は嬉しそうに返事していく。
「野田さん」
自分の名前が呼ばれて、胸がどきんと跳ね上がった。
上手く、声が出ない。何もかも知っているくせに、神崎は不思議そうに首を傾げていた。
「野田さん?」
「は、はい……」
私が返事をすると、神崎はにこっと微笑む。
……誰だ、あれは!?
またまた後ろで女子が黄色い声を上げた。
私は呆然と教卓の前の神崎を見つめるばかりだった。




