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水光学園科学部。Return

作者: 本。

水光学園科学部。を読んで頂けると、もっと楽しめるかもしれません。

 水光学園みなひかりがくえん。そこには、高い学力を持っている事を絶対とした、貧しかったり、お金持ちだったり、普通だったりする家柄の男子と女子が通っている。私立であり、理事長が大らかな人物な為校則もゆるく。私服登校でも良しとされている。要するに、皆の憧れの学校であったりするのだ。


 そんな素晴らしい水光学園に存在する剣道部が活動している第二体育館。そこに、場違いに白衣を着ている人物が三人居た。


「いけーーー!賢志さとし君!!」


「そこだっ!れっ、賢志!」


るのっ!るのよっ!」


 その可笑しな三人組が応援しているのは、1人の少年だった。


「―――――面―――――――!!」


 気付いたらやられていた、と、後に彼と手合わせした人物は言ったという。対戦相手に頭を下げた後、すぐさま少年―――――賢志はその三人組の元へとやって来た。


隆志たかし先輩っ!」


 びくり、と、三人組の中の派手な赤い頭をした男の方が揺れた。どうやらその男が隆志の様だ。

「―――は、まだ良いとして。剛志つよし先輩っ!」


 今度は短い黒髪の男の方が揺れる。こっちの方は剛志らしい。


「何ですか、殺れって!明らかにおかしいですよね!?それに、はな先輩!!」


 三人組の中の唯一の女の方が揺れた。この女の名は華というらしい。


「まず、あの時点で既に戦ってます!それに貴女、女でしょう!?言葉が悪過ぎます!」


「まあ、過ぎた事は良いじゃない。賢志君」


「そうだぞ、賢志」


 若干怯えが入った様子の華と剛志が言った。


「はあ…。何しに、来たんですか…?」


 額に手を当てて、沈痛な面持ちで賢志が問うた。


「やーだー。もうっ、本当は分かってるんでしょー?賢志君のいー・けー・ずー」


 華は賢志を人差し指でついついとつつく。


「だから、無表情のままハイテンションの人の口調で言わないで下さいっていつも言ってますよね!?」


「俺達が何をしに来たかだって…?」


 完全に自分の世界に入っている隆志が、ふふふと笑って顎に手を当てた。馬鹿①である。


「そんなのはなぁ…」


 こちらもふふふと笑って顎に手を当てている、剛志。すなわち馬鹿②である。


「「「応援に来たに決まってんじゃん!!」」」


 ババーンと口で効果音を唱える華。別名馬鹿③。


 そして三人揃って阿呆っぽいポーズを決めている。流石馬鹿①②③が揃っているだけある。


「止めてくれ、そこの馬鹿三人組!ってゆーか頼んでませんから!」


「「「!!」」」


 賢志は、流石に傷付いたか?と思い、ちらりと三人を見ると、急に隆志が右肩を、剛志が左肩をがしりと掴んできた。華は左腕は真っ直ぐに伸ばし、右腕で自らの左腕を掴み、賢志から少し離れた所で、気まずそうに顔をそらしている。


「な…何ですか?何かマズイ事言いました?」


「賢志君…」


「賢志…」


 隆志と剛志は真剣な顔をしていたかと思うと、何だか哀れむ様な、可哀相なものを見るような目をしていた。華もそんな目で賢志を見ていた。


「な…何ですか」


「「この学校は、生徒の自主性を重んじる学校なんだよ…」」


「は?」


 そんな事も知らなかったのか、と、顔に書いてあった。何処かで何かが切れる音がした。

 賢志はちょうど持っていた竹刀を一番近くにいた剛志に躊躇い無く振り下ろした。剛志は寸での所で、真剣白刃取りをして見せた。


「―――…だ…い」


「「「え?」」」


「手を、離して下さい」


 賢志はにっこりと、女の子が見たら、見惚れてしまいそうな笑みを浮かべると、ぐぐぐっと手に力を込めた。


「「ヒイィッ」」


「笑顔が怖いわ、賢志君!」


 馬鹿①②③が顔を青ざめる。


 あの時、彼の背後に般若の顔が見えた。(匿名Hさんの証言による)


「…はあ。で、僕まだ試合あるんで。戻って良いですか?」


 賢はやや呆然とした感じの剣道部員達の方を指差して言った。


「いやー、賢志も大変だなっ。怪我した部員の代わりに練習試合の助っ人頼まれるなんて」


「はあ」


「そこで、だ」


「私達、ただ応援しに来ただけじゃないのよ」


「はあ。だけの方が有り難かったんですが」


「ちゃんと、差し入れを持って来たんだよ!」


「差し入れ…ですか…」


「「「Yes!!」」」


 親指を突き出しながら言う三人組を見て、賢志は一瞬苦い顔になって、直ぐに何だか切な気な顔になった。


「何だか、嫌な予感を通り越して悪寒がするんですけど…」


「俺からはこれだ!!」


 賢志の切ない呟きを無視して、剛志が賢志の手に何かを乗せた。


「わっ!――――――――…ダンベル?」


「おう!そいつで腕を鍛えて相手をぶっ飛ばしてやれ!!」


 賢志は何も言わずにそれを剛志の足に落とした。


「アウチッ!!!」


 転げ回る剛志を踏みつけて、隆志が賢志の前に出る。


「俺からはこれを」


 隆志が賢志の掌の上に、何かをそっと置く。


「…球根?」


 賢志が呟くと、隆志は何故か満足そうに頷いた。


「チューリップのだ」


「知りませんよ!というかどうでも良いです!」


「それを育てて、咲いた花を見て疲れを癒すんだ。自分で育てると、美しさが倍だぞ!」


「だから知りませんて!て、ゆーかさっきから差し入れに持って来る意味ゼロなやつばっかですよね!?

時間かかって今直ぐに効果が無いやつばっかですよね!?」


「人生は長いぞ、賢志君」


 賢志はチューリップの球根を隆志に向けて全力で投げた。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!目がっ!目があっ!!」


 目を押さえて転げ回る隆志と、未だに痛みが消えないらしい剛志の鳩尾を綺麗に踏み付けて、途端に上がる悲鳴をこれまた綺麗に無視して、華が賢志の前に出る。


「私からはこれよ」


「ビーフシチュー…ですか?」


「ええ」


「もしかして、華先輩の手作りだったりします?」


「ええ」


「え゛っ」


「はい、あーん」


 嫌そうな顔をする賢志の口をこじ開けて、華はビーフシチューを賢志に食べさせた。


「どう?」


「あ…。えと、あの。…美味しい、です…」


 賢志は恥ずかしそうに頬を染めて言った。


「「え゛え゛っ!?」」


「まだあるから、試合が終わったら一緒に食べましょう」


「あ…じゃあ、…いただきます。じゃ、すいません、行って来ます」


 ショックのあまり(色々な意味で)気絶した二人を残して、賢志はその場を後にした。





 その後、楽しそうにビーフシチューを食べる賢志と華の後ろで、剛志はダンベルで腕を鍛えながら、隆志は植木鉢に植えたチューリップの球根に水をあげながら、泣いていたという。

はっちゃけました。

お友達にReturnもあるという話をしたらぜひ上げて下さいと言われたので。

賢志君贔屓ですが何か?

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