表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI芥川龍之介-ラノベを書く  作者: 橋平 礼
窓の向う側

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

第二節 「Fight!!」という名の毒薬


 十五分。


 その時間は、エジプトの砂時計のように、重苦しく、しかし確信を持って流れた。


 徹がふっと顔を上げた。


 彼はまみの視線に気づいたようだった。いや、初めから気づいていたのかもしれない。


 彼はノートに何かを書き殴ると、それを窓に押し当てた。


 『Fight!!』


 太い、殴り書きの文字。


 まみの心に、奇妙な波紋が広がった。それは歓喜ではない。むしろ、冷ややかな計算であった。


 (ああ、彼は私を使って、自分を鼓舞しているのだ)


 彼女はすぐさま、自分のノートに『ガンバレ』と書き、それに応えた。


 窓越しに交わされる、紙の上の対話。


 一見すれば、それは今昔物語の貴族たちが詠み交わす和歌のように雅やかであり、同時に、地下牢の囚人同士が壁を叩いて交わす合図のように切実であった。


 しかし、その実態はどうだ。


 まみは徹の「Fight」という文字を見ながら、心の内でこう毒づいた。


 (君が頑張るなら、私は君以上に頑張らねばならない。君は私の「鏡」であり、同時に私の「敵」なのだ)


 徹の方も同様であろう。彼は彼女の返事を見て、安心したはずだ。


 自分よりも疲弊し、自分よりも劣っているかもしれない存在が、まだ「脱落」していない。その確認作業こそが、彼にとっての救いなのだ。


 励ましとは、残酷な行為である。


 それは相手を土俵に繋ぎ止め、降りることを許さない宣告に等しい。


 二人は、互いのエゴイズムを燃料にして、再び勉強という名の泥沼へと沈んでいった。


 窓の向こうの徹の笑顔は、暗闇の中で、不気味な仮面のように白く浮き上がって見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ