目の前に迫るゲームの世界
「明日だよっ!」
放課後、紬が身を乗り出した。
他の生徒は部活や帰路に向かおうとしているところだ。
「分かってるわよ。今日ずっと紬がソワソワしてたのを見ていたわ。」
「えっ、そんなに分かりやすかった!?」
「とってもね。授業中、先生があなたのこと睨んでたわよ。気づいてないでしょ…?」
「…気づかなかった。」
優真は「はぁ…」とため息をついた。
「ちゃんとKFMの説明は読んだわね?」
「うん!バッチリだよ!」
「ならいいわ。開始は明日の朝10時よ。まぁ、忘れることはないと思うけど…寝坊しないでよね?」
「確かに、楽しみすぎて眠れないかも…!今日は早めに寝ないとね!私は準備するために帰るよっ!」
「早いわね…」
「また明日!優真、次はゲームの世界で!」
「えぇ、また明日。楽しみましょうね。」
廊下を走って先生に怒られながら、紬は家へ猛ダッシュで帰った。
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翌日、朝。
紬はいつも通り5時に目を覚ました。
「結局、今日もこの時間に起きちゃったぁ…もうちょっと寝たかったな…」
大きく伸びをしてベッドから出ると、冷たい床が足の裏にひやりと触れた。
そのまま庭に出て、木刀を手に取る。
冷たい朝の空気を吸い込みながら木刀を構えた。
手のひらに伝わる木のざらつきが、少しだけ心地いい。
シュッ、シュッ――
朝の静寂を裂くように、木刀が空を切る音だけが聞こえる。
(毎日の日課、続けてる私偉い〜!)
素振りが日課になったのは8歳のころ。
興味本位で
「じいちゃんみたいに刀振りたいっ!」なんて言ったら、
いつも優しいばあちゃんが
「そうか、じゃぁまず素振りからだねぇ…」
なんて言い始め…
あれやこれやと進んでいって、必死に着いて行ったら
「小5で日本1になったもんなぁ…」
そうそう、その時に優真に会ったんだ。
大会で優真に勝って、「私の師匠になってくださいっ!」って言われて。
あれからずっと、一番の親友だ。
「懐かしいな〜」
太陽が少しずつ出てきて空が明るくなってきたようだ。
(あっ…ばあちゃんに見られてる…)
いつからか2階の窓からはばあちゃんがニコニコしながらこちらを見ている。
(気づかなかったぁ…怒られないように集中しよっと…)
素振りを終え、朝ごはんを食べて――気づけばゲームの世界が開かれる時が近づいていた。




