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第6話 変・装・用

「綿矢さんは普段はコンタクトしてるの?」


 エスカレーターで上階のコラボカフェを目指す途中に後ろを向いて聞いてみた。


「ううん、普段は裸眼。今、掛けてるメガネは変・装・用」


 ニヒヒと悪戯な笑みにピースサインを添える綿矢さん。


「変装用って、やっぱり、俺と一緒にいるところ見られるとまずい?」

「えっ、どうして?」

「だって、学校で全然接点のない俺たちが二人だけでいるところを見られたら変に思われるかなって」

「何を勘違いしているのか・なっ!」


 バチンッ

 綿矢さんが繰り出したデコピンはエスカレーターの段差のせいで額ではなく顎に命中した。


「今は聖女様モードじゃないから、それがバレないようにするための変装。別に丹下君と一緒にいるところを見られても私は何でもないよ」


 さっきはあんなに聖女様って呼ばれるの嫌がっていたのに自分で言うのはいいんだ。

 俺が他人から背景キャラって言われるのに似た感覚だろうか。


「いいのか。こういうのってすぐに変な尾ひれの付いた噂になるけど」

「そうなったら正直に言っちゃおうか、二年以上前から何度も修羅場をくぐり抜けてきた仲だって」

「それ絶対に別の誤解を生むやつだから」

「えー、だって、事実じゃん。いいじゃねーかよー」


 幼児化したようにブーブーと不満を言う姿を見ると綿矢さんが本当にアイリスなんだと再認識させられる。


「それに変装してるのは私だけじゃなくて丹下君もだよね」

「ん? 俺は何もしてないけど」

「あれ? その髪型って変装とかじゃなかったの……」


 やばっ、姉さんにワックスで髪型変えてもらっていたの忘れてた。

 エスカレーター横の壁面が鏡になっていて、思わずそっちを見ていつもと違う自分を確認してしまう。


「こ、これは変装とかじゃなくて、アイリスの横に並んだ時に浮き過ぎないようにと思って」


 しまった! 嘘でもいいから変装って言えばよかった。

 これじゃあ、アイリスのために気合入れてこの髪型にしましたって感じじゃないか。

 クラスメイトに対してこんなこと言うなんてマジでキモイって思われるって。


「な、なるほどね。私のために髪型も変えてくれたんだ」


 俺から視線を外して俯く綿矢さん。

 ほらほらほら、これ絶対に引かれてるやつだよ。

 だって、ゲームの中の友人なんだから初対面だって思うじゃん。クラスメイトだなんて絶対に思わないじゃん。


「なんか、変に気合入れて来たみたいになってごめん。キモかったよね」

「ううん、むしろ嬉しいかな。だって、丹下君がそれだけ今日のことを楽しみにしてくれていたってことだから」

「うん。カフェも楽しみだし、オフ会初めてだからいつもと違う感じでアイリスと話せるのも楽しみにしてた」

「だよね。私も同じ。だから今日は目一杯楽しもう」


 綿矢さんがそう言ったタイミングでちょうど目的の階に到着した。

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