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第13話 アバターに幻想を抱くな(前編)

「――それでこれからどこに行くの?」


 公園を出た俺たちは住宅街を並びながら歩く。


 学校からそれほど離れていないのにこの辺りでは全然うちの学校の制服を着た生徒を見かけない。


「うーん、どこっていうより、丹下君に会わせたい人がいるんだよね」


 会わせたい人って誰だろう。

 ま、まさか綿矢さんの家族とかじゃ……。


 俺たちはゲームの中での付き合いはそれなりにあるけど、現実で話すようになってからはまだ一週間も経っていない。こんな段階でそういう展開ってあるのだろうか。


 ……ちょっと待てよ。


 学校ではあんな風に聖女様モードでいる綿矢さんだから、格式高い家で厳格に育てられている可能は十分にある。となれば、友達ができたら早い段階で紹介するようにと言われていることも考えられる。


 だとしたら、目的地である綿矢さんの家で待ち合わせをせずに別の場所で一度待ち合わせをしたことにも納得がいく。


 そして、LINEのメッセージに家族に会わせたいって書かなかったのは俺に変な気を遣わせないため。


 謎はすべて解けたと言っていいんじゃないだろうか。


「さっきからぶつぶつと何を言ってるの」

「こういう時ってやっぱり菓子折りとか持って行った方がいいかなと思って」

「えっ、菓子折りはいらないと思うけど」

「でも、第一印象って大事だから」

「そうかもしれないけど、菓子折り持って行く人はあまりいないんじゃないかな」


 そういうものなのか。

 とりあえず、菓子折りはいいとしても身だしなみはちゃんとしなくてはと思って緩めていたネクタイを締め直した。


「さて、到着」

「えっと、行きたい所ってここ?」

「そう、このお店」


 綿矢さんが連れてきてくれたのは住宅街を抜けた商店が建ち並ぶ通りにある一軒のカフェの前。


 ひまわりの絵が描かれている看板にはGirasolと書かれている。


「ギラソル?」

「ギラソルじゃなくてヒラソル。スペイン語でひまわりって意味」

「だからひまわりの絵が描かれているわけだ」


 綿矢さんの家という推理は外れたが、このお店を綿矢さんの家族が営んでいるという可能性があるから気を抜いてはいけない。

 こんにちはと挨拶をしながら入口の扉を開ける綿矢さんに続いて俺も店に入る。


「いらっしゃい」


 お店のおしゃれな外観とは真逆な低く太い声が響く。


「ひっ!」


 店のカウンターに立っていたのは長身で蝶ネクタイを付けたワイシャツの上からでもわかるゴリゴリに鍛えられた身体、日焼けした浅黒い肌、照明の光が反射するスキンヘッド、さらに店内なのにサングラスを装備したカフェのマスターらしき男性。


 や、やばい。この店カフェじゃなくてどこかの組事務所じゃないのか。


「マスター、ダメダメ。もっと笑顔、笑顔。一見のお客さんが入りにくいじゃないですか」


 こういう人にそんな口きいたらダメだって。東京湾に沈められるぞ。


「そ、そうか」


 ニッと笑って白い歯を見せるマスター。

 いや、その見た目で笑っても別の意味で怖いだけだから。


「綿矢さん、会わせたい人ってまさか……」

「そう、ここのマスター」


 ちょっと待て。俺をこの店のマスターに紹介してどうする。

 人を見た目で判断するのは良くないけど、どう見てもカフェのマスターを隠れ蓑にして、法で裁けないような人に鉄槌を下すような裏稼業をやってるって感じの人だぞ。


「お、俺に何をさせようと……」

「雫ちゃん、お前さんの友達何か勘違いしてるぞ」


 マスターの指摘に綿矢さんはテストで計算ミスでも見つけたように、

「おっと、ここのマスターはね、うちのギルドのマスターでもあるんだよ」

「マジかよっ!?」


 うちのギルドのマスターがこんなゴリゴリの元傭兵みたいな人だなんて……。


 ゲームの中のマスターはレイというHN(ハンドルネーム)で紫の髪にゴスロリ系の服を着た小柄な少女の姿をしているからまさかという思いしかない。


 ゲームを始めて間もない頃にソロでウロウロしていた俺を見つけてくれたアイリス。そして、アイリスの紹介で今のギルドに入れてもらった。

 レイさんは操作、戦術がまだ未熟だった俺に丁寧にそれらを教えてくれて、余った素材から作ったと言って装備品を分けてくれたりもした。


 キャラの見た目は幼いけど、頼れる存在で俺の中ではウララちゃんに並ぶくらいのアイドル的存在でもあったのに……。

 どうしよう、今度からテキストチャットがすべてあの野太い声で再生されてしまう。


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