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回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する  作者: 真義あさひ


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06

「ほら、釣竿を持って! 今日はザリガニ釣りをするんだ!」


「……ザリガニ?」


「そうだ! この池には大きいのがいるんだぞう!」


テオドールは楽しげに笑い、糸の先につけた餌を池へと垂らす。

そして、釣竿の扱い方をケイに教え始めた。


「ケイ、コツはこうだぞ! 焦らずにゆっくり……そうそう、いいぞ!」


まるで普通の兄弟のような時間だ。


最初こそ警戒していたケイだったが、テオドールの楽しそうな表情につられ、気づけば純粋に釣りを楽しんでいた。


というより、ザリガニ釣りは奥が深い。つい夢中になってしまった。


(……何なんだ、これは?)


おかしい。こんなに無邪気な兄だったか?


確かに、最初の人生でも兄と遊んだ記憶はある。

だが今よりもっと幼かったごく短い期間だけだし、必ず父も一緒のときに限られていた。


「〝お兄ちゃま〟か……」


疑問が拭えぬまま、ケイは兄と夕暮れまで釣りを楽しんでしまった。


釣れたザリガニは、兄が五匹、ケイがゼロ匹。


得意げにドヤ顔する、自分とよく似た兄の顔が、とても憎らしかった。


(む、むちゃくちゃ悔しいのだが!?)


次は絶対に勝つ。そう誓って兄と別れた。




その後も、正妻セオドラが留守にすると、兄はケイの部屋を訪れるようになった。



「ケイ、一緒に本を読もう!」


「ケイ、次の休日、一緒に庭で剣の練習をしよう!」


「ケイ、お兄ちゃまと呼んでくれ!」



遊びに誘われ、勉強を共にし、時には剣術の練習をする。


この距離の近さ。

前の人生の兄とは、まるで違う。


「……どういうことだ? 兄はこんなフレンドリーなんかじゃなかったはず」


ケイは混乱していた。


兄は何かを企んでいるのか?

それとも、まだ幼いから純粋なだけなのか?


しかし、もうケイも兄も十歳だ。

回帰前の人生では、この頃には既に険悪な中だったじゃないか。


「……俺の記憶に、何か抜け落ちがあるのだろうか?」


しかし思い返してみても、わからなかった。




「ピアディ、お前から見て、兄はどう見える?」


寝室のベッドの上で、ケイは小さなウーパールーパーに尋ねた。


ピアディはちょこんとケイの手の中に座り、じっと青い瞳でケイを見上げてくる。


「うむ。我から見たあの兄は、あのままのブラコンにしか見えぬぞ?」


「………………ブラコン、だと?」


何だそれは。

回帰前の兄を思い出すと、それほど兄から遠い単語もなかった。


「うむうむ。お前の兄は、お前と一緒にいると楽しそうなのだ!」


「……俺の知ってる兄は、そんな奴じゃなかった」


「本当にそうだったのか?」


「ああ」


「本当に?」


繰り返し確認してくるピアディの言葉に、ケイは思案した。


(回帰前の俺は、兄の何を知っていた? そりゃ確かにすべてを知ってたとは言えないが)


何せ同じ伯爵家の屋敷に住んでいても、正妻と嫡男のあちらは本邸住まい。

妾とその息子ケイは、同じ敷地内の別邸に住んでいる。

最初は父の意向でケイたちも本邸に住んでいたのだが、正妻セオドラを恐れて避難しているとも言えた。


兄テオドールは常に冷酷だったか?

それとも、何かの理由でそう振る舞っていただけなのか?


「まだ、わからないことだらけだな」


ケイは静かに拳を握る。


今はまだ、すべてが謎のままだ。

だが、一つだけ確かなことがある。


この世界は、前世と微妙に違う。

兄も、正妻も、そして俺自身も――何かが違っている。


それを知るためには、もっと多くのことを探らなければならない――。




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