43(第一部完)
ケイは、母ポーラと共に、田舎にある母の実家の子爵家へ行くことを決めた。
心残りが一つだけある。
せっかく兄と仲良くなれたのに、別れることを寂しく思った。
「兄さん。今はお別れですが、また六年後。学園でお会いしましょう」
テオドールは優しく微笑んで頷いた。
別離を受け入れはしたが、ケイとよく似た端正な顔立ちには涙がこぼれている。
「ああ、ケイ。必ず学園で会おう。そのときまで私ももっと強くなっているからな!」
「うん。約束だよ、〝お兄ちゃま〟……!」
泣きながら抱擁し合う兄弟を、ひと足先にポーラと馬車に乗っていたピアディが窓から見つめていた。
(大切な人のために、相棒も兄もあんなに強くなれたのだ。すごいのだ)
小さな手をキュッと握りしめる。
(われ、己はかわゆい愛されウパルパなだけで良いって思ってたけど。それだけじゃ、お父たんもねえやも……友も、誰も助けられなかったのだ……)
今もまだ、海の底に通じる次元の狭間で、ピアディの大切な人たちは封印されたままだ。
「われ、決めたのだ!」
「まあまあ。ピアディちゃん、どうしたの?」
ポーラが優しく、ぷにっとしたボディを撫でてくれる。
「われも頑張る。スーパーウパルパ覚醒を目指すのだ」
「まあ」
ピアディの半透明の身体から、虹色の煌めきが噴き出して馬車の中を満たした。
「まあ。綺麗ねえ」
綺麗なだけではない。
ピアディから放たれた光は、馬車の中の座席や備品、窓などだけでなく、ポーラの全身までキラキラ輝かせた。
(あら? 身体が……)
ポーラは、流産してからずっと痛かったお腹が、スッと楽になるのを感じた。
この小さな可愛いウパルパの力なのは間違いない。
「われはできるウパルパ。ケイも兄も、お母上も、みんなみーんな守ってみせるのだ!」
ケイは兄との別れを惜しんだ後で馬車に乗り、田舎の母の実家へと旅立った。
その姿を、兄テオドールは泣きながら見送った。
「ポーラ……ケイ……うっ、会いに行くからな……!」
隣には父ユヴェルナートもいる。
テオドールと同じように号泣して馬車を見送っていた。
残念というべきか、やっぱりというべきか。
母セオドラは屋敷から出ても来なかったが。
テオドールは、静かに呟いた。
「ケイ、強くなろう。俺も、お前もまだこれからだ」
ケイたちの乗った馬車が遠ざかり、見えなくなる。
物語は次の章、――六年後、兄弟が再会する学園へと動き出す。
第一部 完




