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あまりにもピアディが修行修行とうるさいので、ケイはピアディや父から教えられたことを元に、勇者の光を使う訓練を始めることにした。
だが、うまくいかない。
思えば、回帰後はまだ一度も、勇者の証だという金色の光を見ていない。
ましてや自分から放つこともできなかった。
「ピアディ。やはり学園に入学するまで待ってくれないか? マナの扱いは独学では無理だ」
「マナとはこの時代の魔力の名前だったか? そう難しく考える必要はないのだ。われの時代では素質がない者だってバンバン魔法を使っておったぞ?」
ピアディが本来生きていた千年後のことか?
「嘘つけ」
「本当なのだ。そういう新しい魔法が開発されてたのだ。
われの友も勇者だったが、魔力値は低かった。でもちゃんと勇者をやれていたのだ」
「………………ん?」
ちょっと待て。
今、『友が勇者だった』と言わなかったか???
「お前の友達に、勇者がいたのか?」
「うむ。他には聖女、聖者、大魔道士、賢者、あとなんかいろいろ称号持ちがわれの国には揃っておった」
「いやちょっと待ってくれ。そのラインナップが揃ってて、なんでお前たちは邪悪に負けたんだ?」
どれも世界を代表するクラスの、伝説級の称号持ちではないか。
「それを聞かれると悲しい当時を思い出してしまうのだ……」
ぷるぷるのボディをしわしわにして、ピアディが落ち込んでいる。
「われの友は勇者であった。われの国を襲った邪悪を仲間たちと倒してくれたのだが、敵がしぶとくて死に際に呪いを発したのだ……」
「その呪いが、お前や海底神殿の穢れか」
「うむ……。聖剣の聖者だったお父たんや、聖女ねえやでも防ぎきれないほどのこびり付きであった」
「こびり付き……」
お掃除が大変そうな表現である。
べっとりしていそうだ。
「特にわれのお父たんは最強と呼ばれる男で。お父たんが魔堕ちしたら世界は終わりかねないから、われは皆と神殿ごと海に沈んで次元の狭間に封印したのだ」
(確かピアディは千年後の一国の主だったか。……話を聞く限り、千年後の世界には相当な危機が訪れるようだ)
壮大な話だが、今のケイにはどうしようもない。
だがピアディの話にはケイにとって重要な情報が含まれていた。
「その、友達の勇者はどうやって覚醒したんだ?」
「われも話で聞いただけなのだけど、お父上が邪悪なる者に殺されて、敵討ちの旅の中で覚醒したと言っておった」
「……そうか」
ピアディがまんまるな目でケイを見上げる。
「そなたが回帰前、勇者の光を放てたのはなぜだったのだ?」
「それがわかれば俺も苦労しない」
「今回は大サービスでわれが教えてやるのだ。あのね。そなたは強い思いを持ったとき、光を放ったのだ」
「強い思い……?」
「うむ。そなたが母を守りたいと願ったとき。勇者の光が放たれたのはその瞬間だったのであろう」
ケイはハッとした。
(お母様を……守りたい)
「ウッ。……さ、寒い……冷たい……」
まただ。回帰前の、まだ海底に沈んだままの自分が感じている冷たさが襲ってくる。
だが、凍えそうなほどの冷たさに自分を抱きしめながらも、ケイはピアディの助言から突破口を開きかけていた。
「そうだ。お母様を守りたい。人生をやり直せるなら、今度こそあんな死に方はさせない」
ケイの体が金色に光り始めた。
まだ薄っすらとした弱い光だったが、確かに光には黄金の色が付いている。
「俺は上手くできている。お母様が悲しまない人生をやり直せている……!」
「その思いを忘れぬことだ。勇者とは救う者の別名なのだぞう」
その光を兄が遠くからこっそり目撃し、驚愕していた。
(け、ケイが光っている? しかも――金色って勇者の色ではないか!)
アルトレイ伯爵家の嫡男テオドールは、もちろん自分の家が勇者の末裔だと知っている。
後継者教育で最初に学ぶ知識だからだ。
「もし、あのままケイが勇者に覚醒するなら。次期伯爵は私より……」
母から押しつけられた毒の小瓶を、手の中にぎゅっと握り締めた。
――ケイのほうが相応しいのではないか?




