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回帰後、ケイが特に意識して起こした行動がある。
母と暮らす別邸の使用人たちを味方につけたのだ。
回帰前は、伯爵家には正妻セオドラの配下ばかりだった。
ケイたちは周りを敵に囲まれ、心の休まるときがなかった。
今は違う。
先日、使用人の嫌がらせを父の目の前で明らかにしたように、伯爵家の中を徹底的に観察して、自分と母の味方になり得る人々を探し始めたのだ。
「本当はお父様に訴えるのが一番手っ取り早いんだが。やはりセオドラが元王女というのが厄介だ」
父伯爵は、王家から降嫁したセオドラを正妻として、かなり気を遣って丁重に扱っている。
「うむ。王家と伯爵家に余計な軋轢を生みたくないのであろう」
「そういうこと。お母様が必死に耐えてるのもそのせいだろうな」
本邸はほとんどが正妻の手に落ちている。
使用人たちがケイを転ばせたり、水をかけてきたりするのも本邸の使用人たちだ。
「逆に中立もいる。執事と伯爵家の騎士たちだ」
「彼らはお前の味方なのか?」
「俺というより、お母様のだな。まだお母様がお父様の婚約者だった若い頃から二人を知ってるから、今の妾の立場に同情的なのさ」
元々、母ポーラこそが父ユヴェルナートの婚約者であり正妻となるはずだった。
そう聞いている。
そこに王家が横槍を入れて、王女セオドラとの結婚をねじ込んできたわけだ。
「でも彼らとてセオドラに面と向かっては逆らえない。まあ、せいぜい彼らの罪悪感を利用させてもらおうか」
先日のケイの反撃で、父が介入してくれたお陰で嫌がらせの数はぐっと減った。
その様子を見て、伯爵家の使用人や騎士たちの心ある者たちから態度が劇的に変わった。
ケイやポーラに声をかけたり、手を差し伸べてくれるようになってきた。
(今まで見て見ぬふりしてた癖に)
だが、目に見えて、ポーラの顔に穏やかな微笑みが増えた。
やはりケイの知らないところで母も嫌がらせを受けていたのだろう。
(良い変化だ。俺が動けば周りも変わるようだ)
この調子でいこう。
「早急に改善したいのは物資調達の妨害だ。特に食料品だな」
ケイはナイフで器用にリンゴを切り、種だけ取って皮ごと薄くスライスした。
皿の上にのせてやると、ピアディの大きな青い目がキラキラと輝く。
「わああ……われ、リンゴ大好きなのだ。食べて良いのか?」
「ささやかですが、どうぞ」
大喜びでピアディがリンゴにしゃくしゃく齧りついた。
「んんん~でりーしゃす!」
一口食べては小さな両手を頬っぺたに当てて、ジューシーなリンゴを堪能している。
(こいつ、サラマンダーというが嗜好はベジタリアン寄りだよな)
食べるかと思って、ミミズを探してきて差し出したら「キャー!」と悲鳴を上げて逃げられた。
聞けば肉類はダメで、新鮮なら魚も好きらしい。
まあともあれ。
「ようやく新鮮な野菜や果物が納品されるようになった。あとは料理人を確保できれば、別邸でもちゃんと飯が食えるようになる」
「うむ、食糧庫を覗いてわれビックリ。干からびたニンジンさんが転がってて物悲しかったのだ……」
本邸で家族で取る食事は料理人が作るが、別邸での食事は母ポーラが作っていた。
いくら妾とはいえ母も貴族だ。早く炊事から解放してやりたいとケイは思っている。




