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99.伝説のフリして

 空が藍色に染まりはじめると、街並みはイルミネーションに煌めいた。


 本日はクリスマスイブ。

 二年一組の一同は、クリスマスパーティーをするためぞくぞくと駅前広場に集まっていた。


「メリークリスマス、佐藤君」


「メリクリ、佐藤」


 希世子と勇美が先に来ていた倫行に挨拶をした。


「やあ、メリークリスマス」


 倫行が手を上げて応えた。


「まぁ、今年も綺麗ね」


 希世子が広場中央にある大きな杉の木を見上げた。

 電灯で装飾され巨大クリスマスツリーとなっている。

 この時期この街の名所だ。


「しっかし、今日はやけにさみーな」


 勇美がぶるりと体を震わせた。


「今季一番の冷え込みだそうよ」


「雪が降るとか言ってたな」


「マジかよ」


 などと話しているうちに全員集合した。


「みんな、メリークリスマスイブ!」


 テンションが高いパーティー発起人の委員長、大石雄馬がみんなに声をかける。


「メリークリスマスイブ!」


 みんなもテンション上がりまくりだ。


「今日はカラオケのパーティールームを借りてる! 盛り上がろうぜ!」


「イエー!」


「クリスマスなのに恋人がいない者同士でな!」


 シーン……


「よしっ、移動だ!」


「イエー!」


 移動開始。

 そこへ、


「あっ、雪だ!」


 という声にみんないっせいに空を見上げた。

 小粒の粉雪が舞い落ちてきた。

 雪の訪れを祝うように小規模の歓声が上がった。


「素敵」


 希世子が喜ぶ。


「ホワイトクリスマスか」


 倫行も無性にワクワクしてきた。


「ホワイトクリスマス……」


 勇美は、雪と広場中央の杉の木を見つめ、何やら考え事をしていた。


「どうしたの?」


 希世子が聞くと、


「母ちゃんに聞いた話なんだけど」


 と勇美が前置きして、


「ホワイトクリスマスにこの杉の木の下で告白すると100%成功するらしい」


 ピタリとみんなの会話が止んだ。


「そ、それ本当なの?」


「うん。母ちゃんの世代では有名な伝説だって」


 みんなソワソワしはじめた。


「(と、ということは、今佐藤君に告白すれば……!)」


「好きだ!」


 突如広場に響く愛の告白。

 クラス委員長の雄馬だった。


「俺と付き合ってくれ、副委員長!」


 副委員長、青木巴への告白だった。


「ごめんなさい」


 フラれた。


「うあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 雄馬は、悲しみに沈んだ。


「伝説はガセか」

「そりゃそうよね」

「先走らなくてよかった」


 みんなが口々に言っている。


「(私も告白しなくてよかったわ)」


 希世子も安堵した。


「なにが伝説よ、もう」


 被害はなかったが、希世子は、勇美を責めるような目で見た。


「いやいや、この伝説けっこうマジなんだって。ウチの母ちゃん、伝説通りに告白して父ちゃんと付き合えたし」


「でも委員長あっさりフラれたじゃない」


「ぐはっ」


 雄馬が傷ついた。


「あたし言ったじゃん。ホワイトクリスマスに告白したら成功するって。クリスマスに」


「だから……あ」


 希世子が気づいた。


「あ」


 みんなも気づいた。

 今日は、クリスマスではなくクリスマスイブだった。

 クリスマスの前夜だった。


「あ〜……」


 みんなが雄馬を憐れむ。

 かける言葉がない。


「みんな……」


 雄馬が俯けていた顔を上げた。


「ご覧の通りフラれました」


 みんな暗い気分になった。


「今日は解散しましょう」


 解散を告げた。


「待て、委員長」


 クラスメイトが止める。


「今日はパーっとやろう」

「そうだ、パーっとやって忘れちまえよ」


 みんなが雄馬の肩を抱き、カラオケ店へと歩き出した。



 ……



 クリスマス会は、雄馬を慰める会になった。

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