96.熱を測るフリして
キーンコーンカーンコーン
授業が終わり、休み時間。
「佐藤君、今のところわかった?」
期末も近いので、倫行の勉強でも見ようかと希世子が振り返った。
倫行は、ボ〜っとしていた。
「佐藤君?」
「……ん? あ、授業終わったのか」
気づいてなかった。
「どうかしたの?」
「なんだか体がダルくてな……」
声に元気がない。
「なんだ? 風邪でもひいたか?」
隣から勇美。
「え、風邪?」
途端に心配になる希世子。
「ちょっとごめんなさい」
倫行の額に手を当てた。
「……よくわからないわね」
熱はあるようなないような。
「確かにわかんねぇ」
勇美も手で測るがわからない。
「となると……」
希世子が考えを巡らせる。
「(あれしかないわね……)」
倫行のおでこを見つめた。
自分のおでことコツンコする計測法だ。
「(でも、私にできるかしら……)」
希世子が難しい顔で悩む。
不安だった。
やはり照れがある。
「(いえ、やるのよ希世子! 佐藤君のためですもの!)」
迷いを振り切るように首をブンブン振って握り拳を作った。
「何してんだお前?」
勇美が不審がっている。
「佐藤君、動かないでね」
希世子が顔を近づけていく。
「(ああ、佐藤君の顔がこんなにもそばに……心臓の鼓動が耳に響くわ)」
顔も真っ赤だ。
「(もうちょっとよ……いくわよ、くっつけるわよ……えい!)」
おでこがピタリとくっついた。
「むむむ……」
体温を測る。
「私のほうが高いですってぇ!」
倫行と比べて希世子のおでこのほうが熱かった。
「どういうことなの!? 私のほうが熱があるということなの!?」
希世子がうろたえた。
「希世子、顔真っ赤だからそれでだろ」
それでだった。
「ほら、佐藤立て」
勇美が倫行を立たせた。
「まだ熱があるかわからないのにどこへ連れて行くつもりよ」
希世子が止めようとする。
「だから、熱があるか測りに保健室に行くんだろ」
当然のことを言った。
「……よくそこに気づいたわね」
「希世子って、佐藤のことになるとアホになるよな」
……
倫行は、風邪をひいた。




