95.黒タイツなフリして
休み時間の教室。
男子が顔を寄せ合い話している。
「黒タイツの季節になりましたな」
「ええ、黒タイツの季節です」
「冬は黒タイツに限ります」
ほっこりしている。
「……変態どもめ」
勇美が軽蔑の視線を送っていた。
……
「てなことを、さっき男子が話してた」
勇美が席に戻り希世子に教えた。
「ふんふん」
希世子が心のメモに記録した。
「希世子も男のエロい目に気をつけろよ」
希世子は今日黒タイツを履いていた。
「気をつけろと言われても、人の視線はどうにもできないわ」
「そりゃそうだけど」
勇美は肩をすくめ、
「佐藤も黒タイツ好きなのか?」
席で次の授業の準備をしている倫行に話を振った。
「そんなこと聞かれてもな」
困っている。
「なんで男は黒タイツが好きなんだ?」
「だから……」
困っている。
「勇美、佐藤君にからまないの」
希世子が止めた。
「そもそも俺は、女子のタイツをジロジロ見たりしない」
「本当かよ」
疑いの眼差し。
「それより勇美、次の授業の予習したら? 日付け的に佐藤君が当たって、隣のあなたもくるわよ」
「うげ」
「勉強見てあげるから」
希世子が席を立つ。
すると、足からピリリ〜と引きつった音がした。
「え?」
希世子が下を向く。
タイツが椅子のささくれに引っかかり、破けて穴が開いていた。
黒いタイツから覗く希世子の白い肌。
黒と白、コントラストが映える。
「ウソ!? も〜」
希世子がブーたれた。
「どうした?」
と勇美。
「タイツが破けたわ」
「!」
倫行の瞳がギラリと光ったかと思うと希世子のタイツへ鋭い眼差しを向けた。
「あっ! お前今エロい目で希世子のタイツ見た!」
勇美が目ざとく気づいた。
「女子のタイツ見ないとか言ってたくせに! ムッツリ野郎!」
「ち、違う! 違うんだ!」
倫行があわてる。
「タ、タイツというか、破れたから、その、つい、なんていうか」
「破れたら見るってか!? 佐藤は超弩級のムッツリ変質者だったのか!」
「さ、佐藤君……」
希世子が慄く。
「違うんだ! 聞いてくれ!」
「聞いてやる! 説明しろ!」
「だから、その、普段は見ないけど、破れたから、その」
「さっきと同じじゃねぇか! やっぱり佐藤は変態ムッツリ助平だったんだーーーーー!」
教室中に響いた。
「佐藤くーーーーーん!(それでも私の愛は変わらないわ!)」
希世子は受け入れた。
「違うんだーーーーーーーーーー!」
わかってもらえなかった。




