94.マフラー巻くフリして
放課後。
図書室に寄っていた希世子は、ちょっと遅めの下校時間。
日中は暖かかったが、夕方なると急に冷え込んできた。
「う〜」
昇降口を出た希世子が寒さに体を震わせた。
しかし、今朝家を出る前に見た天気予報の通りだったため、鞄に入れていたマフラーと手袋をバッチリ装備していた。
「いきなり寒くなったな〜」
すると、隣にちょうど倫行がやってきた。
「(ラッキー)佐藤君、今帰り?」
「ああ、友達とバスケしてたんだ」
「(見に行けばよかった……)あら、佐藤君、防寒具は?」
倫行は、いつも通りの服装だった。
「朝あったかかったから持ってきてない」
「天気予報で夕方から急激に冷えるって言ってたのに」
「そうだったのか」
見てなかった。
「へっくし!」
倫行が大きなくしゃみ。
「う〜、バスケして汗かいたから余計に寒いな」
体を温めようと腕をさすった。
「(キラリーン!)」
それを見ていた希世子の瞳が光った。
いいことを思いついたのだ。
「まぁ、大変。佐藤君、これを使って」
希世子は、首に巻いていたマフラーを外して倫行に渡そうとした。
「マフラーを?」
「ええ、このままだと風邪をひいてしまうわ。さぁ」
と倫行を心配しているのは本当だがもう一つ、
「(このマフラーは私の体温でぬくぬく。さぁ、私の温もりに包まれなさい! これからも私の温もりを欲しなさい!)」
そんな思惑があった。が、
「いや、いい」
倫行は、断った。
「俺が温まっても、マフラーを貸した三上が風邪をひいてしまったら意味がない」
当然の考え方だ。
「私は平気よ。手袋をしているし、なにより汗をかいていないもの」
しかし希世子は、マフラーを引っ込めない。
「それでもだ」
倫行は、受け取らない。
「早く。体が冷えるわ」
「大丈夫だ」
「さぁ」
「いい」
「意地を張らないで」
「……」
倫行は、マフラーを受け取った。そして、
「ダメだ」
厳しい表情の強い口調で言った。
希世子の肩が緊張でビクッと震えた。
「さっきも言ったが、俺がマフラーを借りて三上が風邪をひいたらどうする?」
話しながら、倫行は、マフラーを希世子の首へかけ、
「もっと自分の体をいたわれ」
優しく巻いてやった。
「でも、気持ちは嬉しい。ありがとう」
微笑んだ。
「……そうね。私ったら何を意固地になってたのかしら」
希世子は、真面目な顔で反省し、
「(怖い顔からの佐藤君スマイルがたまらなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!)」
心の中で悶えた。




