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89.嗅がせるフリして

 朝。

 希世子が教室に入ると、倫行がスマホを見ていた。


「おはよう、佐藤君」


「ああ、三上。おはよう」


「何を見ているの?」


「自分の髪をちょっと」


 倫行は、スマホの真っ黒な画面に写っている自分を見ていた。


「髪がどうかした?」


「伸ばそうかなぁと思って。これから寒くなるし」


 倫行の髪は、いつもさっぱりと短い。


「いいんじゃないかしら(髪の長い佐藤君見てみたい)」


 興味がある。


「ただ、伸ばすにしてもどんなのがいいかなぁって」


「!」


 キラーンと希世子の瞳が光った。


「そういえば髪型のアプリが」


「私の髪を使うのはどうかしら」


 倫行のアイデアを遮って希世子が提案した。


「三上の?」


「ええ。私の長い髪を佐藤君の頭に載せるの。イメージくらいは湧くはずよ」


「おもしろそうだな」


 倫行がノった。

 ただ希世子には、


「(私の甘い髪の香りを嗅がせてあげる)」


 という考えがあった。


「(一度嗅いだが最後、いつまでも嗅いでいたくなるわよ、フフフ)」


 危険な香りなのだ。


「じゃあ頼む」


 倫行が姿勢を正す。


「ええ、任せて(さぁ、嗅ぎなさい! 香りの虜になりなさい!)」


 希世子が髪を持ち、下半分くらいを倫行の頭に載せた。


「プッ、アハハハハハッ」


 倫行が鏡代わりのスマホを見て吹き出した。


「どうしたの?」


「お、俺の髪が、な、長い、アハハハハハッ」


 それがツボに入った。


「アハハハッ、や、やっぱり、ひーっ、ハハハハハッ、こ、このままで、ブフーーーッ、い、いいや、ハハハハハッ」


 涙を流すほど笑いながら言った。


「そう(笑いすぎて、髪の香りどころじゃなかったわね。残念)」


 希世子が髪を下ろして自分の席に着いた。

 そこへ窓から風が入り、自分の髪からいつもと違う香りがした。


「(これって、もしかして佐藤君の髪の香りかしら?)」


 倫行の頭に載せていて匂いが移ったのだった。


「クンクン」


 希世子が髪を持って匂いを嗅ぐ。


「(いい香り〜)」


 表情がとろける。


「(ずっと嗅いでいられるわ〜)」


 虜になった。


「クンクン(はふ〜〜〜)クンクンクンクン(ほにゃ〜〜〜〜〜)」



 ………………

 …………

 ……



 一日中嗅いでいた。

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