86.グッとくるフリして
廊下の隅に男子が集まっている。
「俺は、女子の上目遣いがたまらない」
「俺は、アヒル口がすげぇ可愛い」
「俺は、耳に髪をかける仕草が好きだな。手洗い場で水飲む時とか最高」
それぞれ女子のグッとくる仕草を話していた。
「ほほう」
希世子が行きつ戻りつしながらずっと聞いていた。
……
「男子って、女子のいろいろな仕草にグッとくるものなのねぇ」
希世子がさきほどの会話を思い出しつつ廊下を歩く。
すると、手洗い場で顔を洗っている倫行を発見した。
「(さっそく使いましょう)佐藤君」
そばへ行く。
「やあ、三上。手洗いか?」
「なんだか喉が渇いちゃって」
希世子は、耳に髪をかけると蛇口から水を飲み、
「ふ〜」
と顔を上げて、上目遣いに倫行を見て、
「フフ」
アヒル口で微笑んだ。
「今日は気温高めね?」
小首を傾げるキュートな仕草付きだ。
「(どうかしら佐藤君? 人間国宝級の可愛さでしょう? 惚れずにはいられないでしょう? フフフ)」
「確かに今日は暑いな〜」
倫行は、ブレザーを脱いでカッターシャツの袖を捲り上げると、ネクタイを雑に緩めてシャツの裾で濡れた顔を拭いた。
腹筋とヘソがチラ見えするおまけ付きだった。
「(カッコイイカッコイイカッコイイーーーーーーーーーーッ! 佐藤君は人間世界遺産やーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!)」
悶えた。
女子も、男子のいろいろな仕草にグッとくるものだった。




