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85.忠犬のフリして

 休日の昼下がり。

 希世子は、清丸を連れて河川敷にやってきた。

 ここで待ち合わせをしているのだ。


「お待たせ」


 相手を見つけて手を上げた。


「おう」


 高身長で短い髪、マニッシュな容姿。

 勇美だった。

 今日は、清丸に会いたいという勇美のために機会を作ったのだった。


「お前が清丸か」


 勇美がさっそく清丸を撫でた。


「ワン」


 清丸が胸を張って返事した。


「あたしは河井勇美だ、よろしくな」


「ワン」


 「こちらこそよろしく」とばかりに吠えた。


「なかなかどうして、男前じゃねぇか」


「ワフ〜」


 清丸が喜ぶ。


「でもあんま強そうに見えねぇな」


「ワフーン!?」


 『ガーン!?』というリアクション。


「この前まで子犬だったんだから」


 希世子がフォローする。


「今は成犬だろ。その体で希世子を守れるのか?」


「ワン!」


 自信たっぷりに吠えた。


「相手が熊でもか?」


「……ワン」


 声が小さくなった。


「熊なんて出ないわよ」


 希世子がもっともなことを言った。


「例えばだよ、例えば。熊じゃなくても暴漢とかさ」


 と話しているところへ、


「三上に河井じゃないか」


 倫行が現れた。

 白い柴犬のマシュマロも連れている。

 散歩中だった。


「佐藤君(やった! 休みの日に会えた!)」


「おう、佐藤」


 心の中で喜ぶ希世子と二本指を立ててハンサムに挨拶する勇美。


「佐藤も犬飼ってたのか」


 勇美が清丸と鼻をくっつけて挨拶しているマシュマロを見た。


「ああ、マシュマロっていうんだ」


 と紹介がすみ、


「そうだ!」


 勇美がポンと手のひらを打って、


「佐藤、希世子を襲ってくれ」


 頼んだ。


「「……」」


 二人が黙り込んだ。

 軽蔑の視線で勇美を見ている。


「ち、違う! そのまんまの意味じゃなくて!」


 勇美があわてて、清丸が強そうに見えないこと、希世子を守れるか話していたことを倫行に聞かせ、


「佐藤が暴漢の演技をやって清丸が希世子を守れるか試すの!」


 目的を教えた。


「清丸なら大丈夫だと思うが」


 倫行の信頼は厚い。


「わかんないだろ。希世子は、これから清丸と二人で散歩することになる。暴漢がでたらヤバいんだから」


 一応希世子の心配をしての提案だ。


「うむ」


「それはまぁ」


 倫行と希世子が納得する。


「もしできなかったら訓練になるし。ほら佐藤、希世子を襲え」


 勇美が促した。


「それじゃあ」


 倫行は、マシュマロのリードを勇美に渡し、


「へ、へへへ、ま、待ちなお嬢さん」


 演技を始めた。


「大根だな」


「ほっといてくれ」


 あらためてスタート。


「ま、待ちな、お嬢さん」


「はい?」


 返事をする希世子。


「(心配は嬉しいけどなにもこんなことしなくても……)」


 あまりやる気はない。


「お、お嬢さん、ずいぶんとべっぴんだな」


「(やってくれてありがとう勇美)いきなりなんですか?」


「お、俺といいことしないか?」


「します」


「ストーーーップ!」


 勇美が止めた。


「しちゃダメだろ!」


「ごめんなさい、つい」


 やり直し。


「お、お嬢さん、俺といいことしないか?」


「あなたは誰ですか? 警察を呼びますよ」


「よ、呼ばせるかー」


 倫行が希世子に襲いかかるフリをする。


「清丸っ、希世子を助けろ!」


「ワン!」


 勇美の指示で清丸が倫行の前に立ちはだかった。


「ワンワンワン!」


 吠えて威嚇する。

 なかなかの迫力だ。


「いいぞ清丸!」


 それを見た勇美が褒めていると、


「ワンワンワンワンワン!」


 今度は、マシュマロが清丸へ向けて吠えた。


「ガルルルル〜」


 歯を剥いて威嚇している。

 倫行が清丸に攻撃されると考え、主人を守るために立ちはだかったのだった。


「ワ、ワフ、ワフワフ〜」


 清丸が「ち、違う違う」とでも言いたげに鳴いている。


「グルル〜」


 わかってもらえなかった。



 ……



 一時間くらいしてようやく誤解が解け、マシュマロの怒りは収まった。

 マシュマロは、主人を守ることのできる立派なワンコだった。

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