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82.綺麗な字のフリして

「三上、今の授業のノート見せてくれないか?」


 授業終わり。

 倫行が前の席の希世子に頼んだ。


「ええ、どうぞ」


 希世子が渡す。


「ありがとう」


 倫行が受け取り、


「三上は字が綺麗だな」


 ノートを見てそんなことを言った。


「書道を習っていたから(よし! 好感度アップ!)」


「ふむ」


 倫行が何やら考える。


「三上、手紙の代筆を頼まれてくれないか?」


 お願いした。


「いいわよ」


 二つ返事で引き受けた。


「悪いな、せっかくの休み時間に」


 倫行がレターセットを出して机に置いた。


「気にしないで」


 希世子が手にペンを持った。


「それじゃ、俺の喋る内容を頼む」


「オーケーよ。(誰への手紙かしら? ラブレターを書かせて『これは誰宛て?』『君さ』とか、フフフ)」


「大好きな早苗さんへ」


 カターン


 希世子がペンを落とした。


「どうした?」


「なんでもないわ」


 希世子は、すました顔で言ったが、内心は、


「(早苗!? 大好きな早苗!? 誰!? どこの雌犬なの!?)」


 動揺しまくっていた。


「早苗さん、いつもありがとう」


「早苗さん、いつもありがとう」


 倫行が言った言葉を希世子が口に出してなぞり書いていく。


「早苗さんは、最高に素敵な女性です」


「早苗さんは、最高に素敵な女性(最高に素敵な女性!?)です」


「今だから言うけど、俺の初恋は早苗さんでした」


「(は、は、初恋!?)今だから言うけど、(は、は、初恋!?)俺の初恋(は、は、初恋!?)は早苗さんでした」


「実は今でもちょっと好きだったりします」


「(すすす好き!?)実は今でも(すすす好き!?)ちょっと(すすす好き!?)好き(すすす好き!?)だったり(すすす好き!?)しま(すすす好き!?)す」


「あ、ちょっとタイム」


 倫行がタイムをかけた。


「まず最初に結婚おめでとうだ。ミスった」


 出だしを間違えたのだった。


「え? 結婚?」


 希世子が目をパチクリさせた。


「ああ」


 倫行が頷く。


「その……早苗さんってそもそもどなた?」


「いとこのお姉さんだ。今度結婚するんで手紙を渡そうと思って」


 それで字の綺麗な希世子に頼んだのだった。


「そうだったのね(よ、よかった〜〜〜〜〜)」


 希世子がすました顔のまま心底ホッとした。


「結婚おめでとうって書くスペースあるか?」


 倫行が聞く。


「え? あ」


 希世子が書いた手紙を確認した。

 スペース以前に、動揺しまくったせいで字がぐしゃぐしゃになり読めなかった。


「どうだ?」


 倫行が手紙を覗き込み、


「これは……」


 顔をしかめた。

 希世子は、謝ってもう一度最初から書く内容を言ってもらおうとしたが、


「なんて達筆なんだ」


 倫行は、感心していた。

 草書体のような文字で書いたと勘違いしていた。


「こんな字も書けるなんて、三上はすごいな」


「つい本気を出してしまったわ」


 合わせておいた。


「しかし、これだと古文書みたいで読めない。普通の字で頼む」


 倫行が新しい紙を出す。


「それもそうね」


 希世子は、何食わぬ顔で受け取った。

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