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8.目にゴミが入ったフリして

 休み時間の教室。


「今日は暑いわね。窓開けていいかしら?」


 窓際最後列に座る希世子が、隣の席の倫行に聞いた。


「ああ、もちろんだ」


「ありがとう」


 希世子が窓を開けた。

 風が室内に入ってくる。


「痛っ」


「どうかしたか?」


「風で目にゴミが入ったみたい」


「それは大変だ」


「ちょっと見てくれるかしら?」


「わかった」


 倫行が席を立ち、座っている希世子に顔を近づけた。


「う〜む、どこだろう?」


「小さな砂粒だと思うわ」


 と言うが、実は、ゴミなど入っていなかった。

 入ったフリをして倫行に顔を近づけさせて、至近距離から見る己の美貌にドキドキさせようというのだ。


「見つからないな」


「もっと顔を近づけて見て」


 倫行は、息がかかるくらい顔を近づけた。


「(フフフ、どうかしら? 私の美しさは。輝くばかりにつやのある肌、潤んだ瞳に吸い込まれそうでしょう?)」


「どこだろう……?」


「(唇なんてプルンプルンになるようケアしてきたんだから。プルンプルンに……プルンプルン……佐藤君の唇、柔らかそう……)」


「まぶたに隠れてるのか?」


「(佐藤君の唇……なんてエロティックなのかしら……嗚呼、この花弁に止まりたい……私は蜜を求めるバタフライ……いただきます……)」


「む? すまん三上、近すぎて見えない」


 二人の距離は、十センチもなかった。

 希世子が無意識に近づいていた。


「はうあっ!?」


 希世子はあわてて離れた。


「はうあ?」


「(き、危険だわ! これでは私が佐藤君という名の花に止まってしまう! あまりに危険すぎる! 両刃もろはの剣ね!)」


「ゴミいいのか?」


 倫行はなんとも思ってないので両刃ではなかった。

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