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79.髪を触らせるフリして

 キーンコーンカーンコーン


 授業終了。

 希世子が教科書を机の中へしまい、肩に垂らしていた長い黒髪を背中へ流した。


「三上って髪長いよな」


 ふと後ろの席に座る倫行がそんなことを言った。


「ええ、そうね」


 希世子が自慢の黒髪をふぁさっと翻して振り返った。


「触り心地ってどんな感じなんだ?」


「触り心地?」


「いつも後ろから見てて気になって。ウチの妹は短いし」


「触ってみる?」


「いいのか?」


「ええ」


 希世子が前へ向き直り、ニヤリと笑った。

 いつかこんな日が来るだろうと、希世子は、髪の手入れを欠かしたことがなかった。

 そして、こんな日が来たからだ。


「(私の髪は極上。一度触れたが最期、離れられなくなるわよ)」


 まるで罠のようだ。


「(さぁ、お触りなさい! 天使が織った絹糸の如き髪に触れて極楽を味わいなさい!)どうぞ、佐藤君」


「じゃあ……」


 倫行が髪を撫でた。


「ふおぉぉぉ〜」


 変な声が出た。


「髪が長いって不思議な感じだな〜、すごいな〜」


 手触りよりも、単純に長いことに感動している。

 一方、触られている希世子は、


「(ほあぁぁぁ〜……)」


 表情をとろけさせていた。


「(佐藤君、髪触るっていうか頭なでなでしてる〜)」


 好きな人にされるなでなでが心地良かったのだ。


「髪ってこんなに伸びるんだな〜」


 感心している倫行。と、


「(ほへぇぇぇ〜、極楽〜)」


 快楽に身を委ねる希世子だった。

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