77.バンパイアなフリして
夕方。
希世子は、清丸と一緒に倫行が住む地域にやって来た。
今日は、ハロウィン。
街の自治会主導で、仮装した子供たちが家々を回るというハロウィンイベントがあるというので見にきたのだった。
本来は夜にやるが、そこは子供たちの安全を考えて夕方になった。
「ワンワンッ」
清丸が道の先へ向けて吠える。
そちらには、仮装した子供たちを引き連れて歩く倫行がいた。
「佐藤君」
希世子と清丸がそばへ行った。
「三上、来てくれたのか。清丸も」
倫行がニッと笑う。
口の中に牙が覗いた。
背中にマント、頭にはシルクハット。
倫行は、バンパイアの仮装をしていた。
「ハハ、この格好だと、なんだか恥ずかしいな」
倫行が照れた。
「似合ってるわよ(素敵……)」
希世子が心の中でポーっとなった。
「希世子ちゃん、久しぶりー」
「ワンちゃんだー」
倫行の後ろには、同じく異形のものに仮装したちびっ子たちがいる。
夏休みに一緒に遊んだ子たちもいた。
年長者が子供たちを連れて歩くのだ。
「希世子ちゃん、トリックオアトリート!」
さっそく子供たちの口からハロウィンの決まり文句が飛び出した。
「ちょっと待ってね」
希世子は、ポケットからアメやらチョコを取り出し、
「はい、ハッピーハロウィン」
子供たちへ配った。
「わーい!」
子供たちが満面の笑顔で受け取った。
「三上、トリックオアトリート?」
倫行も希世子に聞いた。
「あら、佐藤君も? 仕方がないわね」
希世子がお菓子を取り出そうとする。
しかし、ピタリと手を止めた。
「(……お菓子を渡さなかったら、私、佐藤君にトリックされてしまうの?)」
と考えたからだ。
「(バンパイアな佐藤君にトリック……)」
目の前の倫行を見つめる。
妄想する。
〜〜〜
「お菓子を渡さないつもりか?」
「だってもう持ってないんですもの」
「ならば三上にはトリック、つまりいたずらをしよう」
「な、何をするつもりなの?」
「俺はバンパイア。三上の首筋をチュウチュウするのさ」
「いけない人!」
「さぁ、おいで」
〜〜〜
「ダメ! ここは外なのよ! 子供たちだって見てるのに!」
ブンブン首を振った。
「三上?」
「希世子ちゃん?」
倫行もちびっ子も不審がってる。
「……なんでもないの。ハッピーハロウィン」
トリートを出した。
「ありがとう、三上」
倫行は、喜び、
「そろそろ次行かないと。じゃあな」
「バイバーイ」
「またねー、希世子ちゃん」
子供たちを引き連れて去って行った。
姿が見えなくなると、希世子はしゃがんで清丸を撫でた。
「トリックオアトリート……トリックオアトリート……」
ブツブツ言った。
「わ、わふ?」
清丸が怯えた。




