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74.彼氏のフリして

 今日は日曜日。

 希世子は、買い物に行くために、待ち合わせ場所である駅前広場にいた。

 すると、


「こんちは。今一人?」


 なかなかのハンサムが声をかけてきた。

 ナンパだ。


「彼と待ち合わせしてるの」


「ホントに?」


「ええ。あ、来たわ」


 希世子が目を向ける。

 ハンサムもそちらを見た。

 ジーパンにTシャツ姿のラフな格好。

 背が高くて手足が長いイケメンな女子。

 勇美だった。


「おっす」


 勇美が手を上げる。


「この人が私の彼よ」


 希世子が勇美の腕に抱きついた。


「はあ?」


 何言ってんだという顔の勇美。

 ハンサムは、勇美を見ると、


「な、なんてイケメンなんだ」


 声を震わせ、


「こんなイケメンかないっこねぇーーーーーっ!」


 背を向けて逃げだした。

 勇美は、しばしハンサムの背中を見つめてから、


「……またあたしのこと彼氏だって言っただろ」


 ジト目を希世子へ向けた。


「手っ取り早くあしらえるんですもの」


 いつものことだった。


「いつかバチが当たるぞ」


「誰がバチを当てるの? 女神の如き私に」


「けっ」


 鼻の頭にシワを寄せる勇美。


「トイレ行ってくる」


 勇美は、駅の中へ入って行った。

 希世子が待っていると、


「あの」


 後ろから男の声。

 またナンパねと思い、


「彼と待ち合わせしてるの」


 あしらうため型通りに答えて振り返った。

 倫行がいた。


「佐藤君!」


 ビックリな希世子。


「奇遇ね(休みの日に佐藤君に会えた!)」


 すました顔だが心の中では大喜び。


「ああ、後ろ姿で三上かなと思って」


 倫行は、そう言った後、


「……三上、彼氏がいたのか?」


 聞いた。


「あっ!」


 やっちまったことに気づいた。


「違うのっ、ナンパかと思って! 断るための方便よ!」


 あわてて説明する。


「お待たせ〜」


 そこへ、勇美が戻ってきた。


「あ、佐藤じゃん」


 すぐに気づいた。


「勇美っ、私ナンパかと思って佐藤君に『彼氏を待ってる』って言っちゃって!」


「ども、彼氏の河井勇美でーす」


「ちょっとーーーーーーーーーー!」


「ふ、二人はそんな関係だったのか?」


「うん」


「違ーーーーーーーーーーう!」



 ……



 一時間くらいしてようやく倫行はわかってくれた。

 希世子は、バチが当たった。

 というか勇美に当てられた。

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