73.関西弁のフリして
希世子が廊下を歩いていると、
「さっきの子、中学まで関西にいたから時々関西弁出るんだよ」
「関西弁喋ってる女子っていいよなぁ」
「わかるわぁ」
前を歩く男子たちがほんわか顔で話していた。
「関西弁か……」
希世子が影のように距離を詰めて聞いていた。
……
「関西弁といえば、『もうかりまっか』『何でやねん』と……」
希世子が知っている関西弁を口に出す。
「……他にどんなのがあったかしら」
パッと出てこない。
「う〜ん」と考えているうちに教室に着いた。
勇美が席で漫画を読んでいる。
「勇美、もうかりまっか?」
関西弁で話しかけた。
「何で関西弁? お前関西にいたことあったっけ?」
「何でやねん」
希世子はつっこんだ。
「だから、何で関西弁なんだよ」
わけがわからない勇美。
希世子は、
「……プッ。プクククククククククク」
背を丸めて笑った。
「(い、今のツッコミすごく面白かったわ。どうしましょう、私にお笑いの才能があったなんて)」
自画自賛だ。
「何で笑ってんの?」
勇美は全然笑ってない。
「なんだか楽しそうだな」
そこへ倫行がやってきた。
「佐藤君、もうかりまっか?」
さっそく関西弁で話しかけた。
「え? ぼちぼちでんな?」
関西弁で返した。
「何でやねん……プーッ、プクククククククククク」
希世子は、机に突っ伏して笑った。
「……何?」
倫行が頭にハテナマークを浮かべる。
「さぁ?」
勇美が肩をすくめた。
「(なんてこと。私って美人で才女なだけじゃなくとても面白い人間だったのね。天は何物を私に与えたの)」
希世子は、己の底知れぬポテンシャルに酔った。
「(テレビの大会で優勝して、美人女子高生お笑い芸人として活躍するのも悪くないわね)」
明るい未来への想像が膨らんだ。
……
放課後くらいになって、ようやく全然ウケてないことに気づいた。




