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70.汚れたフリして

 本日の体育は、女子の体育教師が休みのため男女合同。

 男女混合のドッジボールをやることになった。

 男子が女子を狙ってはいけない特別ルールで試合開始。


 男子がボールを投げ相手男子がキャッチ。

 相手が投げ返して足に当てたが女子だったのでセーフ。

 女子が投げ返して男子を仕留め、みんなから歓声と拍手。


 というように盛り上がりを見せていた。

 試合は進み、女子がボールをキャッチして希世子に狙いを定めた。


「や!」


 女子が投げる。


「ふっ!」


 希世子が正面でキャッチ。

 しかし、ボールの勢いに押されて後ろにゴロリと転がった。

 背中が土で汚れるが、それに構わず希世子は、地面に手をついて起き上がった。


「負けないわよ」


 希世子がグイと頬に流れる汗を手の甲で拭った。

 頬にも土がついた。


「おお〜」


 周りがどよめく。


「三上さん、汚れることも気にせず一生懸命に……」


 というどよめきだ。


「(フフフ)」


 希世子が心の中で笑った。


「(そうでしょうそうでしょう。一見汚れることを嫌がりそうな美人がたとえ泥だらけになろうともがんばる姿は美しいでしょう)」


 という笑いだった。

 つまり、わざと汚れていた。

 ぶっちゃけ、試合の勝ち負けはどうでもよかった。


「(さぁ、佐藤君、汚れることを厭わない私の勇姿に心奪われなさい!)せや!」


 希世子がボールを投げた。


「ふん!」


 相手の女子がキャッチする。

 ソフトボール部員だ。

 女子は、すぐさま助走をつけて投げた。

 男子顔負けの豪速球。

 ボールは、希世子の横を通り過ぎて勇美の正面に来た。


「勇美!」


「おう!」


 希世子に応えて勇美がキャッチを試みる。

 しかしボールは、腕の中で弾み、弧を描いて後ろへと飛んでいった。


「ちいっ!」


 勇美がズザザーっとスライディングしてなんとかボールを空中でキャッチした。


「あぶね〜」


 息を吐き、勇美が立ち上がる。

 体操服の前面が泥だらけだった。

 さらに、顔にも土がついている。

 高校球児なみに汚れていた。


「そんなに汚れて……やるわね、勇美」


 希世子が讃える。


「へへ、まぁな」


「絶対負けないわよ」


「おう」


「勇美よりも汚れてみせる!」


「ん?」


 希世子は、泥だらけになるまでプレーした。

 誰よりも勝利に貢献した。

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