68.漫画読むフリして
「これ良かったよな」
「ラスト感動したぜ」
男子が漫画を読みながら話している。
「俺もこんな恋してぇ〜」
「俺だってそうだよ」
羨んだ。
「漫画に触発されて恋をしたくなる、か……」
希世子が耳をそば立てて聞いていた。
……
「とはいえ、私漫画あまり読まないのよね」
希世子は、自分の席で独り言ちた。
おもしろい恋愛漫画を倫行に薦めて恋したいモードのスイッチを入れたいのだが、どの漫画がいいのかわからない。
「漫画がどした?」
そこへ勇美がやってきた。
「おもしろい恋愛漫画を探しているの」
「ほほう」
勇美の目がキラリと光った。
「そういうことなら任せとけ。明日オススメを持ってきてやる」
勇美は漫画大好きだった。
◆◆◆
翌日。
朝の教室。
「持ってきたぞ」
勇美がオススメ漫画の入った紙袋を希世子の机の上に置いた。
「ありがとう、勇美」
「とりあえず五巻まで持ってきた。つづきは明日な」
勇美は、自分の席へと戻っていった。
「さてと……読まないと、よね」
希世子がテンション低めで漫画を紙袋から出した。
漫画をほぼ読まない希世子にとっては、正直、読むのが面倒だった。
倫行に薦めて恋愛モードをオンに出来さえすればいい。
けれど、本当におもしろいかどうか読まなければわからないし、何より借りた手前読まないわけにもいかない。
「ある程度おもしろければいいのだけれど」
希世子は、一巻を取り出しページをめくった。
………………
…………
……
「三上」
「……」
「三上」
「……え? あ、はい」
後ろから肩をトントンされて振り返った。
倫行だった。
「どうかしたの?」
「先生がきてる。漫画しまったほうがいいぞ」
「あ」
教壇に担任の朝田千鶴が立っていた。
これから朝のショートホームルームだ。
「いつの間に」
希世子は、急いで漫画を机の中にしまった。
「(どうしましょう。この漫画、時が経つのを忘れるほどおもしろいわ)」
気に入った。
「フッフッフッ」
その様子を見ていた勇美がドヤ顔だった。
……
朝のショートホームルーム終了。
希世子は、すぐに漫画を取り出してつづきを読み始めた。
「そんなにおもしろいのか?」
その様子を見て倫行が聞いた。
「ええ、とても」
「へ〜。一巻読み終わったら貸してくれ」
「二巻を読みながら一巻を読み返したいの。ごめんなさい」
断った。




