6.寝たフリして
「まぁ、佐藤君」
買い物帰りの夕方、希世子が停車場からバスに乗ると中に倫行がいた。
二人がけのシートに一人で座っている。
「偶然だな、三上」
「偶然ね」
と希世子は、すました顔で返しているが、心の中は、
「(休日に佐藤君に会えたーーーーー! 嬉しーーーーー!)」
大喜びだった。
「お隣いいかしら?」
「もちろんだ」
横に座った。
「(そうだわ、いいこと思いついた)」
希世子がひらめいた。
「ああ……なんだか私眠くなってきたわ……」
「突然だな」
希世子は、目を瞑るなり寝てしまった。
しかしこれは寝たフリである。
「(フフフ、どうかしら佐藤君? 『外なのに安心して眠れるほど俺は頼もしいのか!?』と自尊心をくすぐられて私を愛おしく思いなさい!)」
という作戦だ。
「(う〜ん……なんだか……本当に……安心感が……ある……)スヤ〜」
希世子は、本当に寝てしまった。
……
「三上」
「スヤ〜……」
「三上、起きろ。着いたぞ」
「……ん……んん?」
希世子が目を開けた。
そこは降りる予定のバス停だった。
「(やだ、私本当に寝ちゃったのね。)起こしてくれてありがとう」
「いいさ」
二人は、お金を払ってバスを降りた。
「ん〜〜〜」
希世子は、ぐーっと伸びをして、
「あれ?」
一緒にいる倫行を見た。
「佐藤君の降りるバス停過ぎてない?」
倫行は、二つ前で降りなければならなかった。
「三上が寝過ごさないようにと思ってな」
倫行は、爽やかに笑ってみせた。
「(ズキューーーーーン!)」
私のために乗り過ごしただなんて。
希世子は、ハートを射抜かれた。
「じゃあな」
倫行が背を向ける。
「え? バスは? バス代払うわ」
「いい。また明日学校で」
倫行は、走って帰って行った。
夕日が倫行を赤く照らす。
「(爽やか佐藤君素敵ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!)」




