59.泣くフリして
放課後。
図書室にやって来た希世子。
カウンター内には倫行がいた。
今日、倫行は、当番である図書委員の友達に代わって受付け係をすることになった。
それを知り、希世子は図書室に来たのだった。
希世子に気づいた倫行が手を上げる。
希世子は、微笑んで答えた。
図書室では静かにするのがマナーである。
希世子は、本棚の間を歩き、一冊を選んでから席に着いた。
もちろんこれから本を読むつもりだ。
とはいえ、ただ本を読むわけではない。
手に取ったのは、老人と犬が旅をする話で泣けると話題の本。
希世子は最近、男性は泣いている女性にキュンキュンくるものだという情報を得ていた。
そのため、倫行に涙を流す自分を見せるためここに来たのだった。
「(さぁ、佐藤君、美しい涙を流す美しい私を見て心を射抜かれなさい!)」
希世子がページを開いた。
年老いた男と白い犬の挿し絵がある。
「(もう泣きそう……)」
希世子は、清丸を飼い始めてから犬が出てくる話に弱くなっていた。
ペラリ、ペラリとページをめくり読み進める。
「……ぐすっ」
希世子の頬を涙が伝う。
「ずずっ」
その隣では倫行が鼻をすすって泣いていた。
いつの間にか横に座っていた。
「その場面、泣けるよな、ずずずっ」
倫行は、読んだことがあった。
「ええっ、ぐすっ、本当ね」
希世子が共感した。
「次のページ、ずずっ、すごいぞ」
「まぁ、なんてこと、ううっ」
二人で泣いた。




