50.オバケなフリして
夜。
クラスのみんなで学校の裏手にある山の入り口に集まっていた。
これから肝試しをやるのだ。
ルールは、男女二人で山に入って中腹にある御堂に小石を置いてくるというシンプルなもの。
ただ……
「この山には、カップルを見ると襲いかかってくる人食い姥がいるから、くれぐれも捕まらないようにな、ヒヒヒ……」
クラス委員長の大石雄馬がおどろおどろしい声で言ってみんなの恐怖心を煽った。
ほぼ全員失笑しているが。
「では、クジを引いてくれ」
これから御堂まで行く人と驚かす人に別れるのだ。
クジを引いた結果、希世子は、驚かせる役になった。
倫行と勇美は、御堂まで行くほうだ。
「(佐藤君と別々になるなんて……)」
ガッカリな希世子。
「(まぁいいわ。ハリウッドも注目する私の演技力でみんなに悪夢を見せてあげましょう)」
希世子は、白いシーツを持って山へと入って行った。
◆◆◆
「恨めしや〜」
「キャーーーーーーーーーーッ!」
希世子が木の裏側から姿を現すと、カップルは悲鳴を上げて逃げ出した。
「驚かせるのも楽しいわね、フフフ」
いたずらっ子のように笑う。
希世子は、白いシーツを羽織って山を登ってくるクラスメイトを驚かせていた。
ザッザッと下草を踏む足音とともに次のカップルがやってきた。
「お次の生け贄は誰かしら?」
希世子がニヤニヤ笑いながら目を向けると、倫行だった。
一緒の女子は勇美だ。
勇美は、倫行の腕にべったりくっついていた。
「河井、そんなにくっつかれると歩きにくいんだが」
「ヤ、ヤベェよ〜、う、姥に食われたくねぇよ〜」
怯えている勇美。
勇美は、お化けや幽霊が大の苦手だった。
「なっ!?」
希世子が目を剥いて驚く。
「い、勇美何をしているの!? 佐藤君にあんなにもくっついて!」
倫行とべったりくっついている勇美に嫉妬したのだ。
「私が佐藤君を好きだと知っているのに! ひどいわ!」
怒りに身を任せ、希世子が暗闇を走った。
希世子が羽織る白いシーツに蜘蛛の巣が付き、そこに木の葉やら枝やらがさらにくっ付いていった。
……
「何の音だ?」
倫行が耳を澄ませた。
ザザザと何かが森の中を走る音がする。
「い、犬? ね、猫か?」
倫行にくっつき震える勇美。
「近づいてくる」
「ま、ま、まさか、う、う、姥か?」
ガサッと藪を掻き分けて何かが飛び出してきた。
身体中に草や葉っぱや木の枝をくっつけた謎の生き物だった。
「い゛〜さ゛〜み゛〜……う゛ら゛め゛し゛や゛〜」
地獄の底から響いてきたような声で倫行と勇美に襲いかかった。
「「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」」
二人は、踵を返して一目散に逃げ出した。
「ま゛ち゛な゛さ゛い゛〜」
追いかける何か。
というか希世子。
「「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」」
スピードを上げて逃げた。
走りまくってスタート地点まで戻って来た。
「出た! 本当に人食い姥が出たーーーーーっ!」
倫行がそこにいる全員へ向けて叫んだ。
「ハハハ、何言ってんだ倫行」
みんなが笑う。
「ま゛て゛〜」
希世子が髪を振り乱して山を駆け降りてきた。
「「「「「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」」」」」
全員逃げ出した。
……
後に、裏山には、本当に人食い姥が出るという噂が流れるようになった。




