5.作りすぎたフリして
「倫行メシ食おうぜ」
お昼になり、倫行の友人が弁当を持って倫行の席にやってきた。
「うむ。でも、ちょっと待っててくれ」
「え? ああ、今日月曜か」
倫行は、月曜日だけいつも購買でパンを買って食べていた。
「すぐ戻る」
財布を持ち、倫行が行こうとする。
「ちょっといいかしら」
それを希世子が止めた。
「どうした?」
「実は今日、お弁当を作り過ぎてしまって」
「なんと!? 三上は自分で弁当を作っているのか!?」
「たまによ。それで、お弁当が二つあるのだけれど、よければお一ついかが?」
「いいのか!?」
「ええ」
「ありがとう三上!」
倫行は、喜んでもらうことにした。
「私も助かるわ」
と言っているが、これはフリである。
本当は、倫行が月曜はパンの日だと知っていたので、お弁当を食べてもらうためにわざわざ二つ用意したのだった。
倫行を手料理で落とそうというのだ。
「(さあ、佐藤君、私の手作りのお弁当を食べなさい! 胃袋から私に恋しなさい!)」
みんなが希世子の弁当を羨ましがる中、
「いだだきまーす!」
倫行がおかずに箸をつけた。
「うまい! なんてうまいんだ!」
一口食べて絶賛した。
「ありがとう、ウフフ」
希世子は、素直に喜んだ。
「ガツガツモグモグ」
唐揚げ、おにぎり、シャケにブロッコリー。
ものすごい勢いで倫行は弁当を食べていく。
「三上は料理上手だな、モグモグ」
倫行の褒め言葉は止まらない。
「機会があれば、味噌汁も飲んでみたいな」
「そう? じゃあ今度……(……味噌汁が飲みたいですって?)」
希世子が頭の中で倫行のセリフを噛み締める。
「(……ハッ、ま、まさか!?)」
一つのことに思い当たった。
「(それって、プ、プ、プロポーズなのでは!?)」
『お前の作った味噌汁が飲みたい』。
古いプロポーズの常套句に当てはめた。
「さ、佐藤君」
「ん?」
「わ、私の作る、お、お味噌汁が、の、の、飲みたいのよね?」
「ああ。三上の作る味噌汁が飲みたい」
「(やっぱりプロポーズだわーーーーーーーーーーっ!)」
決定した。
「(お父様、お母様、今日まで私を育ててくれてありがとうございます。希世子は幸せになります)」
感謝を述べた。
「コ、コホン。い、いいわよ、けっこ」
んしても、とプロポーズにイエスの返事で答えようとした時、
「味噌汁が飲みたいって、なんかプロポーズみたいだな」
倫行と一緒にご飯を食べていたクラスメイトが口を挟んだ。
「プロポーズって。そんなわけないだろう」
「でも三上さん、勘違いするかもよ」
「そうなのか?」
倫行が希世子に聞く。
「しないわよ」
キレ気味に答えた。




