45.会えなくなるフリして
本日、一学期最終日。
終業式が終わり、希世子たち二年一組が体育館を出た。
夏休みを目の前にして、みんな浮かれている。
「やったー! 夏休みだー!」
勇美のテンションも高い。
「夏休み何する? 何しちゃう?」
ワクワク顔で隣の希世子に聞いた。
「フ〜……」
希世子は真逆のテンションで長い息を吐き出した。
「明日から、佐藤君と会えなくなるのね……」
というため息だった。
「夏休みなんてなければいいのに」
「怖いこと言うなよ」
勇美が震えた。
二人の横を倫行が歩いて行く。
「明日から夏休みだ! アハハハッ」
無邪気に笑っている。
「佐藤君、あんなに笑って……私に会えなくて寂しくないの?」
「なんも考えてないだけじゃね?」
勇美が見たまんま答えた。
「ひとつ試してみましょう」
◆◆◆
教室に戻り希世子は席に着くと、後ろに座る倫行を振り返った。
「佐藤君、私夏休みは地中海の避暑地に行く予定なの」
「いきなりだな。地中海とはすごい」
「夏休みの間ずっといるつもりよ」
「そうか。気をつけてな」
「……(それだけ? それだけなの佐藤君? 夏休みの間会えないのよ? 私に会えなくて寂しくないの?)」
希世子が不安に駆られる。
地中海に行くのは本当だが、夏休みの間ずっとではなかった。
これは、会えなくなるフリをして倫行が寂しがるかを試しているのだった。
「地中海かぁ。いいなぁ、どんなものがあるのかなぁ」
羨ましそうな倫行。
「(寂しくなんてないようね。一人寂しく思ってる私が馬鹿みたいだわ)よければお土産を買ってくるわ。高価なものでもかまわないわよ、何でも言ってちょうだい」
希世子は、悲しみを押し隠して投げやり気味に言った。
「そんなものはいい。海外は危険だから、三上が無事に帰ってくることが一番のお土産だ」
「(大しゅきーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!)」




