41.ボタン付けるフリして
「あ、ボタンが取れた」
昼休み。
倫行のカッターシャツのボタンが取れた。
「(待ってましたー!)私が付けてあげるわ」
心の中で歓喜した希世子。
すまし顔ですぐに反応した。
「助かる」
倫行がカッターシャツを脱ぐためボタンを外していく。
「(私の女子力の高さを見せる機会がようやくおとずれたわ)」
それで『待ってましたー!』だった。
「(ちょちょいと付けて、『三上と結婚する人は幸せ者』と脳にインプットしてあげる)」
心でニヤニヤ笑いながらソーイングセットを出して準備した。
「じゃあ頼む」
倫行が脱いだカッターシャツを渡した。
「はい。すぐ付け……」
希世子が思わず言葉を途切れさせた。
「(佐藤君っ、上半身裸ーーーーーーーーーーっ!)」
倫行は、裸だった。
アンダーシャツを着ていなかった。
「……佐藤君、シャツは?」
呼吸を整えてから希世子が尋ねた。
「今朝急いでて忘れたんだ」
「そう……」
希世子が倫行の裸を見つめたまま返事した。
「すぐに付けるわね」
希世子が倫行の裸を見つめたままカッターシャツを受け取った。
釘付けだった。
「(落ち着くのよ、希世子。裸なんてプールの時も見たじゃない)」
心を落ち着かせて針を出す。
「(でも、ここは教室なのよ。勉強するところなのよ。そこで突然裸なのよ)」
指が震えている。
「(糸を針に通して佐藤君の引き締まった体にボタンを合わせてから薄っすら割れてる腹筋で糸は白を選んでエロティックな鎖骨にシャツを伸ばしてなんて綺麗な形のおへそかしら)」
……
三十分くらいかかった。




