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40.負けるフリして

 昼食を中庭で食べていた希世子。

 教室に戻って来ると、倫行が男女数人と机を囲みトランプをしていた。


「三上」


 倫行が気づく。


「一緒にどうだ?」


 誘った。

 みんなもおいでおいでと手招きする。


「いいの?」


「もちろん」


 倫行が椅子を用意する。


「ありがとう」


 希世子が輪に加わった。


「何をしていたの?」


「ババ抜きだよ」


 女子の一人が教えた。


「倫行が弱くって、ここまで全負け」


 トランプを切ってる男子が苦笑する。


「なぜ勝てないんだ」


 倫行が難しい顔でうなった。


「(素直な性格だから、表情に出るんじゃないかしら)」


 なんとなく予想がついた。


「引くのは時計回りな」


 言って男子がカードを配り始める。

 希世子は、倫行から引くことになる。


「(安心して、佐藤君。私がわざとジョーカーを引いて、あなたを勝たせるわ)」


 負けるフリをすることにした。


「(夫を支えるのは妻のつとめですもの)」


 妄想で気合い十分だ。


「あ、そうそう。一位のやつは、最下位のやつに何でも命令できるってルールあるから」


「……」



 ◆◆◆



「というわけで、最下位はまたしても倫行」


「なぜなんだ……」


 ガックリな倫行。


「で、一位は三上さん」


「ありがとう」


 希世子が手を上げた。


「(勝負とは非情なものなの、佐藤君)」


 言ってることが変わっていた。


「それじゃあ三上さん、倫行にどんな命令をする?」


「そうね……」


 希世子が頬に手を当て考える。


「(私をギュッとしなさい、は気があることがバレるわね。頬にキスもアウト。肩を揉む、は普通に頼めるし)」


 なかなか決まらない。


「なんでもいいんだぞ」


 倫行がフォローを入れる。


「これまでも、モノマネとか腕立て伏せとかテストの点教えろとか散々だったしな、ハハハ」


「……」


「三上?」


「……じゃあ、スクワット五十回で」


「わかった」


 倫行がさっそく始めた。


「ハハハ、これはキビしい」

「もっとスピード上げて」

「いち、に、さん、し」


 みんながはやしたてる。


「(危うく場違いな命令を出すところだったわ)」


 希世子は、酔っ払い大学生の王様ゲーム的な命令を出そうとしていた己を恥じた。

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