4.歌うフリして
放課後、クラスメイトとカラオケにやって来た希世子。
倫行も来ている。
「いつかビッグになるぜ〜、USA〜」
ワー
パチパチパチ
男子が歌い終え、みんなが歓声と拍手を送った。
「次は誰?」
「私よ」
希世子がマイクを持って立ち上がり前に出た。
「三上さんだー」
「ヒューヒュー」
希世子のオンステージに、これまで以上に盛り上がる。
メロディーが流れる。
曲は、甘い歌詞が魅力的なラブソングだ。
「あなたを〜、ずっと見ていた〜」
希世子が歌い出すと、みんなが歌声に聞き惚れた。
まるで天女が歌っているようだ。
それもそのはず。
希世子は、この歌を練習しまくったのだから。
目的はただ一つ。
倫行にサビを聞かせるためだ。
サビは、愛のメッセージ。
それを倫行を見つめて歌い、「もしかして三上は俺のこと……いや……でも……」とドギマギさせて倫行の中で気になる存在になってやろうと考えていた。
「(さあ、もうすぐサビよ。聴き惚れなさい、佐藤君!)あなたが大好き〜」
「これってここ押して送信?」
倫行は、友達にリモコンの操作を尋ねていた。
「(ちょっとーーーーー!)」
希世子は、表情には出さずに悔しがった。
「(まだよ希世子。後半があるわ)」
チャンスはまだあった。
間奏が流れ、後半に入り、サビにきた。
「(私の歌を聞けーーー!)愛し」
「失礼しま〜す」
店員が入ってきた。
「(うおーーーーーーーーーーい!)」
希世子は、心の中で抗議した。
歌い終わった。
「素晴らしかったよ」
「感動した」
「涙が……」
みんな絶賛だった。
「作戦が……」
落ち込んでた。
「次は?」
「俺だ」
倫行の番だ。
前に出る。
「(フフフ。佐藤君、あらゆる音楽に精通するこの私を満足させることができるかしら?)」
希世子が足を組んで目をつむり耳を傾けた。
倫行が歌い出す。
「一生〜、俺のそばにいろ〜」
「(いるいるいます! あなたが大好き佐藤くーーーーーーーーーーん!)」
大満足だった。




