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36.おごるフリして

 学校からの帰宅途中、希世子は、財布を拾った。

 交番へ届け出ると、そこに持ち主である五十歳くらいのサラリーマンがいて、感謝を述べたあと希世子へお礼として一割の謝礼金を渡そうとした。

 希世子は断ったが、最終的に受け取った。というか握らされた。



 ……



 交番を出た希世子。

 手に持っている一万円札二枚を見つめた。

 さっきの謝礼金だ。


「どうしましょう」


 いきなり舞い込んだ大金に戸惑っていると、近くにある回転寿司の店が目に入った。


「そうだわ。クラスのみんなにご馳走しましょうか」


 クラスメイトに寿司をおごることにした。



 ◆◆◆



 ラインで、「回るお寿司ご馳走します。暇な人はここに来て」とURL付きで呼びかけると、クラスの約半数、十八人がきた。

 倫行と勇美もいる。


 みんなでワイワイ寿司を食べ、一時間ほど楽しい時間を過ごして店を出た。


「二万十円。ほぼちょうどね」


 店の前、希世子が長いレシートを見ている。

 十円オーバーだが、このくらい問題ない。


「いや〜、食った食った」


 希世子から離れたところにいる男子が満足そうに膨らんだ腹をなでた。


「寿司サイコー」

「お前、寿司以外のもんばっか食ってただろ」


 ハハハとみんなで笑い合う。

 希世子も見ていて嬉しい。


「そういや三上さん、何で奢ってくれたんだ?」

「さあ、お嬢様の気まぐれじゃね?」

「庶民に施しを、みたいな? アハハハ」


 嫌な会話まで聞こえてきてしまった。


「(でも、間違ってないのかもね。個人で使うこともできたわけだし)」


 希世子が自嘲気味に笑った。

 すると男子たちのところに倫行が近寄った。


「そういうことを言うのはやめろ」


 怒っている。


「な、なんだよ倫行?」

「じ、冗談だって」

「真面目かよ、アハ、アハハハ」


「冗談でもやめろ」


 倫行は、笑って流さない。


「わ、わかったって」

「もう言わないから」

「誓うって、マジで」


 反省してる男子たちをじーっと見てから、倫行はその場を離れた。

 ホッと息を吐く男子たち。


 ドゲシッ ドゲシッ ドゲシッ


 そのお尻を誰かが蹴り上げた。


「痛ってぇ!」


 男子たちが後ろを振り返る。

 勇美だった。

 勇美は、男子たちを順番にひと睨みしてから離れた。


「フフフ」


 それらを見ていた希世子が笑う。


「(二人とも大好きよ)」


 自分のことで怒ってくれることが嬉しかった。


「三上、今日はありがとう」


「ごっそーさん」


 倫行と勇美が希世子の元へやって来た。


「どういたしまして、フフフ」


「「?」」


 笑っている希世子を見て、二人が息ぴったりに首を傾げた。


「フフフ、アハハハハ」


 それがおかしくて希世子がまた笑った。


「なぁ、三上。どうして今日は奢ってくれたんだ?」


 希世子が笑い止んだタイミングで倫行が聞いた。


「今日ね――」


 希世子がいきさつを説明する。


「――それでお寿司でもと思ったの」


 話し終えると、


「何ぃ!?」


 倫行がいきなり叫んだ。


「お会計で二万十円払ってなかったか!?」


「払ったわね」


「だったら十円オーバーしてるじゃないか!」


「十円くらいいいわ」


「そうはいかない! みんなから集めてくる」


 倫行は、十八人から十円分集めに行った。


「(どうやって集めるのかしら?)」


 希世子が倫行を見送った。


「な、なぁ、希世子」


 倫行がいなくなり、今度は勇美が震える声で呼んだ。


「何かしら?」


「い、一割が二万円ってことは、その人、に、に、二十万円持ってたってことだよな?」


「それが?」


「それがじゃねぇよ! 謝礼金って最高二割貰えるんだぞ! なんで全額貰わねぇんだよ!」


「……」


 希世子が呆れてる。


「本当だったら四万円貰えてたのに! うわぁぁぁっ!」


 我がことのように悔しがった。

 倫行は、みんなから六銭を徴収しようとし、勇美は、地面に膝をついて嘆いている。


「……私、変な人が好きなのかしら」


 そこそこ真剣に悩む希世子だった。

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