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31.代わるフリして

 一限目ホームルームでの席替えが終わり、二限目開始。


「(良かった、佐藤君の近くになれて。これで授業に集中できるわ)」


 希世子は、スッキリした顔でペンを手に取った。


「(佐藤君が後ろにいるんだと思ったら、いくらでもがんばれ……後ろに!?)」


 希世子がペンを落とした。


「(佐藤君に見られまくりじゃない!)」


 ということに気づいたのだ。


「(ど、どうしましょう!? 髪はといた!? 服にシワはない!? 汗でシミたりしてない!?)」


 不安でいっぱいだ。


「(ハッ!? 汗臭かったらどうしましょう!? 席替えの時汗をかいたから!)」


 ポキッ


「(ヤダっ、首がポキッて鳴っちゃったわ! 『三上の首がポキッ』とか思われてたら恥ずかしすぎる!)」


 ムズムズ


「(耳の穴にかゆみが! でも佐藤君が見てるのにかけるわけない! 誰か助けてーーーーーーーーーーっ!)」


 まったく授業に集中できなかった。



 ……



 キーンコーンカーンコーン


 二限目終了。


「先生、少しいいですか?」


 倫行は、先生に質問しに行った。

 倫行の隣の席に座っていた勇美が希世子を見た。

 いつものすまし顔だが、どことなく疲れた顔をしているのに気づいた。


「どうだ、その席の座り心地は?」


 席を立ち、勇美が希世子のところへ行った。


「それが……」


 覇気のない声で希世子が説明する。


「なるほどな。それで疲れてんのか」


 勇美が納得した。


「ねぇ勇美、佐藤君、授業中どこ見てた?」


「前見てた」


「やっぱり私を見てたのね」


「黒板じゃね?」


「良い席なのに、良い席に思えない……」


 希世子がため息を吐いた。


「勇美、席を代わってくれないかしら?」


「ここ前の私の席だしメンドいから嫌だ」


「ありがとう」


 希世子が机を持って移動しようとした。


「お前は日本語が通じないのか!」


 勇美が阻止する。


「席代わるのか?」


 倫行が戻ってきた。


「勇美がここに帰りたいって」


「ざけんな!」


「むぅ、残念だな」


 倫行の眉が下がった。


「残念?」


「ああ。三上は、いつも背筋をピンと伸ばして、凛とした姿勢で授業を受けているだろう? それがとてもカッコ良くて、そんな人が前にいたら俺も勉強頑張るぞって気持ちになるからな」


「ごめんなさい勇美。席を代わる話はなしにして」


 机を元の場所に置いた。


「佐藤君、私をたくさん見て勉強頑張ってね」


「わかった」


 席は代わらないことになった。


「……」


 勇美がジト目で希世子を見た。

 希世子は、受け流した。

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