3.気分がすぐれないフリして
それから半年後。
現在。
朝。
長い黒髪を揺らし、希世子が学校の門をくぐると、すぐに周囲の注目が集まった。
「三上さんだ」
「今日も綺麗だなぁ」
容姿端麗の才女でナイスバディ。
きつめの顔立ちに加え良家のお嬢様ということもあり近寄りがたいが、それが男子の気を引きもする。
「三上さん、おはよう」
イケメンが声をかける。
「おはよう」
すまし顔の希世子が口元だけを笑ませて返した。
「今日も綺麗だね」
褒められた希世子は、謙遜する様子など微塵も見せず誇るように顎をクイと上げ、
「ありがとう」
一言お礼を言った。
その自信に満ちた姿にイケメンだけでなくみんながポ〜っと見惚れた。
希世子は、自分が美女であることを自覚していた。
……
二年一組の教室に到着した希世子。
ガラリと扉を引き開け中へ入った。
クラスのみんなに挨拶をし、窓際一番後ろの席に鞄を置くと、
「おはよう、三上」
隣の席から元気な声をかけられた。
希世子の想い人、佐藤倫行だ。
「おはよう、佐藤君」
希世子が返すと、倫行が白い歯を見せて笑った。
「(今日も素敵……)」
心の中でうっとりした。
「(でもね、佐藤君、私だけがメロメロになるのはこれが最後よ。今日こそあなたを惚れさせてみせる!)」
希世子は、決意を強く倫行を見つめ、
「はふぅ」
突然床に倒れた。
「三上!? どうした!?」
倫行がすぐに心配する。
「うぅ……なんだか急に気分が……」
弱々しい声で言って倫行を見上げた。
しかしこれは、気分が悪くなったフリだった。
「(佐藤君、あなたならば半年前と同じように私をおんぶして保健室に連れて行こうとするはず)」
そう予想して倒れたフリをしたのだ。
「(でもね、私の体は成長しているの。あの時よりも育ったこのナイスバディで密着してメロメロにしてあげるわ、フフフ)」
などと考えていた。
「保健室へ行こう!」
倫行が希世子のそばにしゃがんだ。
「(かかった! さぁ、私をおんぶなさい! 去年よりも成長した私のバディにメロメロになりなさい!)」
「動くなよ!」
「動くな?」
倫行は、右腕を希世子の背中に回し、左腕を膝裏に入れて希世子を持ち上げた。
お姫様抱っこだ。
「行くぞ!」
倫行がそのまま走り出す。
「(去年よりもたくましくなってるーーーーーーーーーーっ! カッコイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!)」
メロメロになった。




