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28.花を愛でるフリして

 日曜日。

 希世子が散歩をしていると、生垣の一部が薔薇のアーチになっている家を見つけた。


「まぁ、見事」


 希世子が惚れ惚れと眺める。


「ここって確か、佐藤君の通学路だったはず……」


 いいことを思いついた。



 ◆◆◆



 次の日の朝。

 倫行が学校へ向かって歩いていると、道の先で立っている希世子を見つけた。


「三上じゃないか」


 倫行がそばへと早足に向かう。


「佐藤君、おはよう」


「おはよう。ここで何してるんだ?」


「素敵な薔薇のアーチだなと思って」


 希世子が昨日も見た咲き誇る薔薇の門を見上げた。

 さりげなく、倫行から見て自分のバックに薔薇がくる位置へ移動している。


 そうなのである。

 希世子が薔薇を見ているのはフリで、薔薇を引き立て役にして己をさらに美しく魅せようというのであった。


「(どうかしら佐藤君? 美しい私がより美しく見えるでしょう? ウフフフフ)」


 すまし顔のまま心の中でほくそ笑んだ。


「あら、おはよう」


 そこへ、家からおばあさんが出てきた。


「おはよう、ばあちゃん」


 倫行が親しげに返した。


「お知り合いなの?」


「挨拶してるうちに仲良くなったんだ。ばあちゃん、この子は俺のクラスメイトの三上だ」


「おはようございます、三上希世子といいます」


 希世子が楚々と挨拶した。


「橋本しづ子です。薔薇の妖精かと思っちゃうくらい綺麗な子ねぇ、ホホホ」


「そんな(よく言われます)。お見事な薔薇のアーチですね」


「今年も綺麗に咲いたな、ばあちゃん」


「ありがとう、二人とも。ちょっと待ってて」


 しづ子は、庭へ行くと、そこにも咲いている薔薇を数本鋏で切り、新聞紙で巻いて戻ってきた。


「これあげるわ。教室にでもお飾りなさいな」


「ありがとう、ばあちゃん」


「ありがとうございます、おばあ様」


 二人でお礼を言った。

 倫行は、薔薇の花束を受け取ると、一本だけ引き抜いて、


「これは三上にプレゼントだ」


 希世子へ差し出した。


「私に?」


「ああ、立ち止まって見入るくらい気に入ってたみたいだから」


「まぁ、ありがとう」


 希世子は、微笑み受け取った。が、内心は、


「(ば、ば、薔薇もらったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!)」


 大慌てだった。なぜなら、


「(薔薇の花言葉は『あなたを愛しています』だったはずよね!)」


 ということだ。


「(これはそうなの!? そういうことなの!? どうなの私の佐藤きゅん!?)」


「先生にもあげよ。あ、隣のおばちゃんにも」


 多分違う。

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