27.ハンカチ洗うフリして
「これありがとう」
女子が男子にハンカチを返した。
「ん? ああ、怪我した時に貸したやつか。なんか綺麗になってね?」
「昨日、家帰って洗ったからね」
「お前が?」
「そうよ」
「へ〜、けっこう家庭的なんだな」
男子の女子を見る目が変わった。
「バ、バカ、普通よ」
女子は照れた。
「ふむふむ」
希世子は、やり取りを心のノートにしっかりメモした。
◆◆◆
一週間後。
「痛っ」
希世子は、授業終わりに教科書をしまう際、紙で指を切ってしまった。
「どうした?」
隣から倫行が心配そうに声をかけた。
「(これはあれを試すいい機会ね)」
一週間前に心のノートにメモったことを思い起こした。
「(ハンカチを洗って返して、『三上は美人なだけでなく家庭的な一面もあわせ持つスーパーガールなんだな』って思わせてあげるわ)」
そういう作戦だった。
「紙で指を切っちゃったの」
「何!? それは大変だ!」
倫行が怪我の箇所を見た。
「佐藤君、ハンカチ貸し」
てくれるかしら、と聞くまえに、
「血を止めなければ!」
倫行は希世子の手を掴み、
「パク」
怪我してる指を口に含んだ。
「!?」
希世子が目をまん丸にして硬直した。
「はひひょーふは。ふふひはほはふ(大丈夫だ。すぐ血は止まる)」
倫行が顔を上げる。
「あっ! す、すまん!」
希世子の表情を見て自分が何をしているかに思い至り、すぐに口を離した。
「い、妹にするように、つい」
言い訳を口にした。
希世子は、
「いいの、気にしないで」
すまし顔に戻ってそう言ったが、内心は、
「(ペロペロされちゃったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!)」
嬉し恥ずかしだった。
「本当にすまない」
「いいのよ(ペロペローーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!)」
「なんとかしないとと思って」
「わかってるわ(ペロペローーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!)」
「洗いに行こう」
「大丈夫だから(もう一生洗わないペローーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!)」




