25.ご飯粒取るフリして
中庭のベンチでカップルがお弁当を食べている。
「いいわねぇ」
廊下の窓から希世子が見ていた。
「私もいつか佐藤君とあんな風に……フフフ」
妄想していると、
「あ、セナったらほっぺにお弁当つけてる」
「マジ? どこ?」
「こ〜こ」
彼女が頬から米粒を取って、パクリと食べた。
「モグモグ、んふふ〜、ごちそうさま」
「ミナミの母性、マジ半端ねぇ」
彼氏の彼女を見る目に情熱が増した。
「これだ!」
希世子が叫んだ。
◆◆◆
数日後。
希世子が教室でお弁当食べていると、チャンスが到来した。
倫行がおにぎりを食べた後、頬にご飯粒をつけていたのだ。
希世子の目がギラリと光った。
「(今だ!)」
目にも止まらぬ速さで希世子がご飯粒をつまみ取った。
「む? 今、風が吹き抜けたような」
「佐藤君、ほっぺにお弁当つけてたわよ」
希世子が指先に載せた白米を見せた。
「いつの間に。ありがとう、三上」
「どういたしまして。(本番はこれからよ。さぁ、ご覧なさい! そして私を情熱的な眼差しで見つめなさい!)」
倫行が見守る中、希世子がご飯粒を口へ運ぼうとした。
しかし、口に入れる数センチ前で止まった。
「(……これって、かなり恥ずかしい行為なのでは?)」
今さらながら気づいた。
「(彼女でもないのにご飯粒を食べて、痴女とか思われないかしら?)」
ためらう。
「三上?」
動かなくなった希世子に首を傾げる倫行。
「なんでもないの」
希世子は、倫行のご飯粒を自分の弁当箱に入れた。
「(持って帰ってしまっておきましょう)」
大切に保管することにした。




