23.風景写真のフリして
「いいわぁ。これも素敵ねぇ」
廊下の壁にもたれ、希世子は、スマホで撮った風景写真を見ていた。
隣では、勇美が呆れた顔で希世子を見ていた。
「何かしら?」
視線に気づいて希世子が聞いた。
「別に〜」
勇美は肩をすくめた。
カシャ
その時、近くからシャッター音が聞こえた。
二人が周りへ顔を向けるが、写真を撮っている人は見当たらない。
しかし、
「待つんだ」
通りかかった倫行が一人の男子の手を掴んだ。
「な、何だよ?」
男子が手を振り解こうとする。
目が忙しなく動き、声がどもっている。
「今、三上のことをこっそり撮っただろう。良くないぞ」
「と、撮ってない」
「んじゃあスマホ見せろよ」
横から勇美が詰め寄る。
倫行と勇美に挟まれた男子は、おろおろしたあと、
「ご、ごめん!」
謝った。
「どうしても三上さんの写真が欲しくって」
「だったら一言断ればいいじゃないか? 勝手に撮るのは盗撮だぞ」
倫行が責める。
「い、いや、それは、な、何てゆうか」
男子がモゴモゴ喋っていると、
「いいかしら?」
希世子が男子と倫行の間に入った。
「私の変な写真を撮ったの?」
「い、いえまさか! こう、トロンとしたような、すごく良い表情で、これ撮りたいって思って」
「だったらいいわよ、それくらい」
希世子が男子を許した。
「おお、なんて優しいんだ三上」
倫行は、感動した。
「そんなことないわ(思わぬところで好感度アップ。ラッキーね、希世子)」
顔では微笑を浮かべる程度だが、心の中では大喜びの希世子だった。
「あ、ありがとうございます! それじゃ!」
男子は、笑顔でお礼を言うと去っていった。
「俺も用事の途中だった。また後でな」
倫行も廊下を歩いて行った。
「佐藤君、どこからともなく現れて私を助けてくれるなんて……素敵」
希世子が熱い視線で倫行の背中を見送る。
倫行の姿が見えなくなると、その目を自身のスマホへ向けた。
「いいわぁ。これなんて最高よ」
また風景写真を見る。
その表情は、男子が言ったようにとろけていた。
「希世子もさ、それやめたほうがいいよ」
勇美が注意した。
「それって何かしら?」
「そういう写真撮るの」
「風景写真を撮ることの何がいけないのよ?」
「希世子が撮ってんのは」
勇美が希世子の持っているスマホ画面を指さした。
「画面の端っこにいる佐藤だろ」
そこには、友達と歩いている倫行が写っていた。
「そりゃ、盗撮されても許すよな。自分だって佐藤を盗撮してるんだから」
許したのはそういうわけだった。
「これは盗撮じゃないわ。佐藤君は、たまたま写っただけよ」
「じゃあ何で百枚以上あるただの風景写真全部に佐藤が写ってるんだよ?」
「偶然って怖いわね」
「怖いのはお前だよ」




