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22.怖がるフリして

*注意

怖い話、虫の話が苦手な方は読み飛ばしてください。

「その時だ。振り返ると死んだはずのA君が後ろに!」


「キャーーーーーッ!」


 女子数名が悲鳴を上げた。

 お昼休みの教室。

 みんな一箇所に集まって怖い話をしていた。


「な、なかなか怖かったな」

「お、お前、話うまいな」


 みんなが今の話に恐怖心をあおられていた。

 希世子も、


「(こ、怖かった〜)」


 と内心では震えていたが、すまし顔を変えることはなかった。


 三上の令嬢たるもの、怖い話ごときで悲鳴を上げるような醜態を晒すわけにはいかないのである。


「ふ〜、聞いてて背筋が寒くなったぞ」


 倫行は、怖がっていた。


「じゃあ、次は俺が」


 男子が話し始めた。



 ……



 俺の姉ちゃんマンションで一人暮らししてるんだけど、そこの家賃が格安でさ、部屋借りる前にみんなが「なんかヤバいって」って言ってたのに、姉ちゃんは気にせず借りたんだ。


 そんで、マンション暮らしが始まってひと月くらい経ったころかな。

 姉ちゃん、キャミってメス猫と一緒に住んでたんだけど、ある晩部屋の中から『一緒に死んで……』って声が聞こえてきたんだ。


 もちろん部屋には誰もいない。

 姉ちゃんは、気のせいだろうと思ってキャミと遊んだ。

 そしたらまた、『一緒に死んでよ……』って。

 さすがに怖くなったけど、姉ちゃんは明るい気分に切り替えたくてキャミに、


「キ、キャミちゃん何か言ったかなぁ?」


 って冗談で聞いたらキャミが、


「私じゃなくてあなたの後ろの女よ」


 って。



 ……



「キャーーーーーーーーーーッ!」

「うおーーーーーっ! こえーーーーーっ!」


 女子の高音の悲鳴と男子の低音の悲鳴が入り混じった。

 希世子も、


「(キャーーーーーーーー!)」


 心の中で悲鳴を上げた。

 そんな中、花井という可愛い系の女子が、


「きゃーーーっ」


 と叫んで話していた男子の腕にくっつき、


「もーっ、怖すぎるよー」


 大きな目に涙を溜めて頬を膨らませ、


「ばかばかー」


 ポカポカと腕をたたいた。

 男子は、頬を赤くして、


「ご、ごめんごめん、へへへ」


 デレデレの顔で照れた。


「(これだーーーーーーーーーーっ!)」


 希世子が心の中で叫んだ。


「(花井さんすごいわ! 私もこうすれば佐藤君を落とせる!)」


 花井を参考にすることにした。

 三上の令嬢たるものが――とかは、すっかり頭から消えた。


「次は俺が」


 折よく倫行の番が回ってきた。


「(カモン佐藤君! たとえ怖くなくても怖いフリして『ばかばかー』するから!)」


 希世子がフフフとほくそ微笑んだ。


「もうすぐ昼休み終わるな」

「最後にめっちゃ怖いの頼む」


 話し出そうとする倫行に注文が飛ぶ。

 それを聞いた倫行は、


「だったらとびきりのやつを話そうか?」


 と尋ねた。


「中学の時話したら、失神するやつが出たほどのヤバい話なんだが……」


 おどろおどろしい声で言って倫行が確認をとる。


「いいじゃん」

「おもしろそう」

「逆に聞きたくなった」


 みんなオーケーした。

 心の中では、「本当かよ?」と疑っている。


「楽しみね。(見事に怖がってみせるわ!)」


 希世子も準備万端だった。


「では」


 倫行が一度深呼吸して話し出した。


「これは、俺が実際に経験した話だ。中学一年の夏休み――」



 ……



 昼間に降った雨のせいで蒸し暑い夜だった。

 俺は、夜中になっても眠れず布団の中で何度も寝返りを打っていた。


 その内喉の渇きを覚え、水を飲むため布団から出て一階へと降りていった。

 家の中は真っ暗で何も見えない。

 けれど、勝手知ったる我が家だ、何がどこにあるかは見えなくてもわかる。


 俺は、台所の明かりを点けようと壁に手を伸ばしてスイッチを押した。

 その時、スイッチを押した感触がいつもと違っていた。


 カチッというよりブチッみたい感覚だった。

 何だろうとスイッチを見るが、うちの電灯はスイッチを押してから明かりが点くまでに若干のタイムラグがある。


 俺はスイッチに顔を近づけて待った。

 パッと明かりが点いた。

 すると、スイッチの上にゴキブリがいた。


 俺は、スイッチと一緒にスイッチの上にいたゴキブリも押してたんだ。

 ゴキブリは、背中あたりが潰れていて内臓を腹からはみ出させていたが死ぬに死にきれずスイッチにくっついた状態で脚をカサカサカサカサ動かしていて、俺の指にもゴキブリの内臓がべっとりと――



 ……



「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」


 みんな恐怖に絶叫した。

 泣く者、教室から逃げ出す者もいた。


「お、お、お前っ、怖いの種類が違うだろ!」

「反則だそれ!」


 みんなで倫行を非難する。

 希世子もガチの悲鳴を上げるという醜態を晒す前に教室を出ていた。


 作戦のことなどどうでもいいくらい怖かった。

 というか、気持ち悪かった。


 こうして、お昼の怖い話大会は、みんなにトラウマレベルの傷を残して幕を閉じた。

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