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21.相合傘のフリして

 放課後の昇降口。

 希世子が空を見上げる。

 昼から降り出した雨は、どしゃ降りになっていた。


「どうしましょう……」


 希世子は、傘を持ってきていなかった。

 周りにも希世子と同じ理由で困っている生徒が多くいる。


 そのうちの一人の女子に男子が近寄った。

 二人は少し話したあと、相合傘で昇降口を出た。

 男子が傘を持っている。

 女子を濡らすまいと男子は傘を傾け、自分の肩を濡らしていた。


「いいわねぇ……」


 希世子が羨んだ。


「……佐藤君は、私のために濡れてくれるかしら」


 ふと気になった。


「三上」


 そこへ倫行がやってきた。


「佐藤君」


 希世子が素早く倫行の持ち物を確認する。

 傘を持っていた。


「ここで何してるんだ?」


「傘を忘れたの」


「だったら俺の傘に入るといい」


「ありがとう(やった!)」


 お礼を言った希世子が心の中でも喜んだ。

 先ほど気になった、倫行が自分のために濡れてくれるのかを試せるからだ。


「じゃあ、バス停までお願いできるかしら?」


 バス停までは五十メートルほど。

 家までだとさすがに申し訳ないので、濡れたとしてもビショビショにならない距離にした。


「わかった」


 倫行が傘を差す。

 希世子が隣に並び、二人は、雨の中を歩き出した。


「(……この肩が触れ合う距離感、緊張するわね)」


 希世子は、倫行との相合傘にドキドキした。


「(でも今は、佐藤君が濡れてくれるのかが重要よ。もう少し、佐藤君から離れないと)」


 倫行の傘は大きい。

 傾ける必要がないほどだ。

 ということで、傾ける必要があるくらいまで、希世子は、歩きながら倫行と微妙に距離を取った。


「む?」


 倫行が希世子との間にできた隙間に気づいた。


「三上」


 倫行は、希世子の肩に手を置き、


「もっとそばへ来い」


 グイと抱き寄せた。


「っ!」


 希世子の肩がビクッと震えた。


「あまり俺から離れるな」


 耳元でささやく。


「はい……」


 希世子は、のぼせたような表情で頷いた。

 雨が傘を打つ梅雨の午後。

 二人は、肩を寄せ合って帰った。

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