20.映画観るフリして
クラスメイトとデパートにやってきた倫行と希世子。
目的は、最上階にある映画館。
今話題の、『転生したら好きな子の彼氏だった』という恋愛映画を観るためである。
チケットを購入してホールに入る。
希世子は、ちゃっかり倫行の右隣をキープした。
「この映画、本当におもしろいのかな?」
倫行の左側に座っている男子が倫行に聞いた。
「おもしろいって話だろ?」
「そうだけど。俺、おもしろくないと寝ちゃうタイプなんだよ。倫行は?」
「俺は、どんな内容でも全部見る。じゃないとちゃんとした評価ができない」
「(偉いわ佐藤君。世界中の映画監督があなたを称賛してるわよ)」
希世子が監督たちに代わって褒めた。
ポップコーンをつまみながら映画について話しているうちに上映開始時刻となった。
映画が始まる。
二十歳で脳死状態になった主人公が神様パワーで転生して好きだった女性の彼氏に生まれ変わった。
そんな物語の序盤。
転生した主人公が、彼にとっての初夜を迎えた。
主人公とヒロイン、ベッドの上。
「い、いいのかい?」
「もちろんじゃない」
「和美!」
主人公がヒロインの唇に吸いついた。
これまで抱えていた気持ちをぶつけるようでとても荒々しい。
映画館内にピチャピチャと粘膜を吸う音が響く。
「(なんて気まずいのかしら……)」
希世子は、困っていた。
一緒に来たクラスメイト全員同じ気持ちだった。
学校の友人と見る映画ではなかった。
「(でもこのシーンは、今後の勉強になるはず。目を逸らしてはダメよ、希世子)」
希世子が映画に集中する。
「(し、舌をあんなに絡めるの!? ゆ、指があんなところをまさぐってる!? はわわっ、こ、こんなにもカチンコチンだなんて!?)」
希世子は、限界寸前だ。
「(こ、こんなの私にはまだ早いわ!)」
ついには顔を背けた。
「(佐藤君は、どうなのかしら?)」
ふと気になり左隣を見た。
頬をピンク色に染め、もじもじ落ち着かない様子ながらも観ていた。
たとえどんな内容でも全て観るというのが倫行のポリシーだった。
「(か、可愛いーーーーーーーーーーっ!)」
倫行の反応に希世子はキュンキュンきた。
「む、こ、これは、ん、んんっ」
恥ずかしくてたまらないが、それでも倫行は、スクリーンから目を逸らさない。
「(佐藤君かわいーーーーーっ! きゃわいーーーーーーーーーーっ!)」
希世子は、映画を観るフリをして、エロいシーンを観ている好きな人を見ていた。




