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18.身代わりのフリして

 放課後。

 希世子が見た目イケメンな女子、河井勇美とグラウンド横を歩いていると、


「危ない!」


 という大声が聞こえた。

 希世子の数メートル手前に、どこからか飛んできた白球が迫っている。

 希世子がギュッと目を閉じた。直後、パシッと乾いた音がした。


「危ないな」


 勇美が片手で受け止めていた。


「サーセン!」


 野球部員が帽子を取って頭を下げた。


「気ぃつけろよ」


 勇美がボールを投げ返した。

 唸りを上げる豪速球が野球部員のグローブをかすめ遥か彼方へ飛んでいった。


「希世子、怪我してないか?」


 勇美が聞いた。

 希世子は、熱っぽい目で勇美を見上げていた。


「何だよ?」


 勇美が気持ち悪がる。


「勇美、すごくカッコ良かった。愛の告白をしそうになるくらい」


「ごめんなさい」


「しないわよ。でも、これなら佐藤君を落とせるわ!」



 ……



 十分後。

 倫行は、帰る途中にある河川敷を歩いていた。

 すると、


「危ない!」


 後ろから声が聞こえてきた。


「ん?」


 振り返るとこちらへ向かって飛んでくる白球が見えた。


「佐藤君!」


 倫行にくっつくようにして、飛んでくる白球のライン上に希世子が立った。


「三上!?」


「(フフフ、私が身を呈して佐藤君を守れば、佐藤君は私を見てときめきが止まらなくなるはず)」


 という、さきほどの出来事をオマージュした作戦だった。

 ボールを投げたのは、豪腕の持ち主勇美だ。

 しかし、野球経験のない希世子は、受け止めることはできないだろうということで、体に当てて守ろうとしていた。


「(さあ、きなさい! 幸せの白いボールよ!)」


 希世子が飛んでくる白球を見据える。

 百マイルくらいでていた。


「(軽く投げてって言ったのにーーーーー!)」


 これが勇美にとっての軽くだった。


「(早――避――否――死!?)」


 希世子の脳が瞬時に死を覚悟した。

 その時、


「危ない!」


 倫行が希世子を胸に抱きしめ、ボールに対して背を向けた。

 ドスッと重い音を響かせて硬球が倫行の背中に直撃した。


「佐藤君!?」


 希世子が叫ぶ。


「ハ、ハハ、だ、大丈夫だ」


「大丈夫って……」


 希世子が倫行の背中を見た。

 背負っていたリュックに当たったのだった。


「ホッ」


 希世子が安堵の息を吐いた。


「三上が無事でよかった」


 倫行が微笑む。

 夕日に照らされ白い歯がキラリと光った。


「(私の心臓がドキドキすぎて無事じゃなーーーーーーーーーーい!)」


 ときめきが止まらなかった。

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