12.こぼしたフリして
休み時間の教室。
「どうして佐藤君は、こっちをフリ向いてくれないのかしら」
希世子は、憂えていた。
「私は、こんなにも美しいのに」
「性格悪いからじゃね?」
勇美が缶のジュースを飲みつつ答えた。
「私は、性格も美しいわ」
「美しいやつは自分で言わないだろ」
「ああ、佐藤君」
スルーした。
「もうコクれよ」
「付き合える可能性が百じゃないのに告白してどうするのよ。勇美は、力だけじゃなく脳みそもゴリラね」
「ああん!?」
スチール缶が潰れた。
ジュースがこぼれた。
「何やってるのよ」
希世子がハンカチで机にこぼれたジュースを拭いた。
「お前のせいだろ」
「はっ! これだわ!」
希世子は、倫行の気を引く良い方法を思いついた。
◆◆◆
「ふ〜、スッキリした」
トイレに行っていた倫行が、ガラリと扉を開けて教室に入った。
「キャ」
「うおっ」
そのタイミングで希世子とぶつかってしまった。
希世子の持っていた缶ジュースから中身がこぼれて希世子の上履きを濡らした。
「すまん、三上」
「こちらこそごめんなさい」
「足を拭こう。上履きと靴下を脱いでくれ」
倫行がハンカチを取り出した。
「これくらいいいわ」
「そう言わず。このままでは心苦しい」
「……じゃあ」
希世子は、仕方なしという体で椅子に座って上履きと靴下を脱いだ。
しかし、これらはフリだった。
ぶつかったのもジュースをこぼしたのも計算ずくだった。
自分の足を拭かせるための。
「(さあ、お拭きなさい! そして、私の美脚に見惚れてハァハァ興奮なさい!)」
倫行が跪いて自分の膝に希世子の足を載せて拭いた。
「(……やだ、何これ、佐藤君が使用人のように私の足を拭いてるわ。なんだか……なんだか私……)ハァ、ハァ……ウフフフ……」
希世子は、興奮した。




