112.責任とるフリして
夜。
希世子は、テレビドラマを見ていた。
急いでいた少年が曲がり角で少女とぶつかる。
少女は、ほっぺを怪我してしまった。
「ああ、もしこの傷が一生残ったら、私もうお嫁に行けないわ!」
「もし傷が残ったら、俺が責任を取る!」
「え、それって」
「俺がお前を嫁にもらう!」
少年が少女の手を握る。
少女は頬を赤くした。
「古風ねぇ」
「ワフ」
希世子と清丸がこたつに入って見ていた。
◆◆◆
次の日。
登校した希世子が教室へ向かって歩いていると、廊下の先に倫行を見つけた。
早歩きで追いつく。
「おはよう、佐藤君」
「三上。おはよう」
「今朝も冷えるわね」
「ああ、寒いし空気が乾燥してるしで肌がカサついてる」
と話しているうちに教室前に到着した。
倫行がドアを開けようと引手に指をかける。
すると、バチッと弾けたような音が鳴った。
静電気だ。
「わっ!」
驚いた倫行が思わず手を引いた。
その際、斜め後ろに立っていた希世子の頬に倫行の指先が当たってしまった。
「痛っ」
痛みに希世子が頬を手で押さえる。
「三上!」
何をしたかすぐに理解した倫行が素早く振り返った。
「すまない! 大丈夫か!?」
「ビックリしたけれど、大丈夫よ」
希世子が頬から手をどけた。
白い肌に赤い筋が走っている。
ミミズ腫れになっていた。
「お、俺はなんてことを……」
倫行がわなわな震えた。
自分のしでかしてしまったことに恐怖していた。
「すまない……」
心底申し訳なさそうな顔の倫行。
「気にしないで。本当に大丈夫だから」
「もし傷が残ったら、責任を取るから」
「え? それって(まさかお嫁さんに……!?)」
「責任を取って治るまでの治療費や病院までの交通費を払う。必要なら送り迎えも」
「……」
そりゃそうよねぇ、と思う希世子だった。




