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107.雪だるまのフリして

 冬休みも終盤。

 勇美は、希世子の家にきていた。

 冬休みの宿題をするためだった。


「清丸、お手」


「ワン」


 でも部屋で清丸と遊んでいた。


「勇美、宿題しないと」


 希世子が注意する。


「休憩中」


「ウチに来てから休憩しかしてないじゃない」


 もう二時間くらい経っている。


「夜やる。夜」


 今日は、はなから泊まりの予定だった。


「ワンワン!」


 ふいに清丸が窓の方を向いて吠えた。

 勇美がそちらを見る。


「雪が降ってる!」


 はしゃいだ声を上げた。


「まぁ、本当」


 希世子が窓辺に寄った。

 ベランダに落ちた雪は溶けずに残っている。


「積もりそうね」


「明日が楽しみだな」


「ワン」


 今からワクワクし始めている勇美と清丸だった。



 ◆◆◆



 翌朝。


「積もったー!」


「ワンワーン!」


 勇美と清丸がテンション高く外へ出た。

 街は銀世界。

 庭も足首まで埋まるくらいに雪が積もっていた。


「ひゃっほー! あたしが一番!」


 テニスコートでも作れそうなくらいの広い庭。

 誰も汚していない雪の絨毯を勇美が嬉々として踏み締める。


「ワンワンワン!」


 その後に、同じくテンションマックスな清丸が走ってついていく。

 はしゃぎっぷりが似ている。


「勇美が二人いるみたいというか、清丸が二匹いるみたいというか……」


 希世子はしみじみ思った。


「おりゃ!」


 勇美が清丸へ雪を水のように手で掬ってかけた。


「ワフ!」


 清丸はそれを避けると、後ろ足で雪をかいて勇美にかけ返した。


「わぷっ! ハハハッ、やるな清丸!」


「ワンワン!」


 雪のかけあいが始まる


「あれには混ざれないわね」


 希世子は、見ているだけで風邪をひきそうな光景に体をぶるりと震わせ、


「そうだ、いいものを作りましょう」


 雪玉を作ってコロコロ転がしだした。



 ……



 一時間後。


「へへ、いい勝負だったぜ清丸」


「ワフワフ」


 体から湯気が出ている勇美と舌を出してハァハァ言ってる清丸がお互いの健闘を讃えた。


「できたわ!」


 そこへ希世子の声が聞こえてきた。


「何ができたんだ?」


「ワフ?」


 勇美と清丸がそばへ行った。


「これよ」


 希世子が作ったものを見せる。

 倫行の等身大の雪像だった。


「すげーーーーー!」


「ワフーーーーーン!」


 勇美と清丸が大口を開けてビックリした。


「そっくりじゃねぇか!」


 完璧な出来栄えだった。

 まるで本人が立っているかのようだ。


「フフフ」


 希世子が鼻高々に笑う。


「何かしてると思ったら、よくもまぁ」


 呆れ半分の勇美。


「そうだわ、写真を撮りましょう」


 と希世子がスマホを取り出した時、


「三上ー」


 門のほうから声が聞こえた。


「え? この声って」


 希世子が顔を向ける。


「佐藤君!?」


 雪像ではなく本人がいた。


「あ、さっき『希世子の家で雪合戦しよう』ってライン送ったんだった」


 勇美が今さらながらに思い出した。


「もっと早く教えてよ!」


 希世子が身なりを整える。が、


「む? そこにあるのは雪像か?」


 倫行が雪像に気づいた。


「なんだか俺に似ているような……」


 目を細めて眺める。


「(マズい! このままだと私の恋心がバレる!)」


 そう思い、希世子は、


「やっ!」


 倫行像を押した。

 ドスンッと重い音を響かせ倫行像が地面に倒れた。

 腕が千切れ、足が折れ、もげた首が雪の上をコロコロ転がった。


「まだ顔がわかる! えい! えい!」


 希世子は、倫行の顔を何度も踏んづけて完全に潰した。


「ふ〜、これでいいわ」


 バラバラのグチャグチャになった倫行像を見て希世子が冷や汗を拭った。


「……希世子って、本当に佐藤のこと好きなの?」


 疑わずにはいられなかった。

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