105.変装のフリして
お正月。
希世子と勇美は、デパートに来ていた。
目的は福袋。
開店前のデパート入り口には行列ができていて、希世子と勇美も並んでいた。
「まだかな〜。早く開かないかな〜」
並び始めからずっとソワソワしている勇美。
「もうすぐよ」
落ち着いている希世子。
福袋が欲しいのは勇美で、希世子は、付き添いだった。
狙いは、好きなスポーツブランドの福袋だった。
「一番重いやつ買うんだ。重いほうが良いもの入ってるに決まってる」
「昔話のダメなパターンを思い出すわねぇ」
と話していると、
「ご覧ください。お正月から大勢のお客さんが並んでいます」
列の前のほうからそんな声が聞こえてきた。
二人が前を見る。
カメラを肩に担いだ男性とマイクを持った綺麗な女性がいた。
テレビだった。
しかも生中継だ。
「この列、どこまであるかといいますと」
中継クルーが前から後ろへと、列を舐めるように撮っていく。
「マズい」
それを見た希世子がマスクとサングラスを取り出した。
「お正月といえばこのニュース見るものね。用意しておいて良かったわ」
それらを装着した。
「別にちょっと映るくらいいいじゃん」
勇美は、別に気にしない。
「私が映ると世界が私に気づいて放っておかないでしょう。私は一般人でいたいの」
「はいはい」
適当に返事した。
カメラが勇美と希世子を映して通り過ぎていく。
「ふぅ。世界デビューはまぬがれたわね」
希世子が安堵した。
そこへ、希世子のスマホが鳴った。
ラインの通知だ。
「誰かしら?」
画面を見る。
「まぁ、佐藤君!」
喜ぶ希世子。内容は、
『今テレビ見てたら三上と河井が映ってた。デパート前だろ?』
「佐藤が、テレビ映ってたってさ」
勇美にもきていた。
「実際映ってたって言われると恥ずいな、ハハハ」
勇美が笑って希世子を見た。
希世子は、プルプル震えていた。
「え? どうした?」
と勇美が心配すると、
「佐藤君が、テレビに映ってる私に気づいた!」
希世子は、ビックリしていた。
「それが?」
「私サングラスとマスクをしていたのに佐藤君は私に気づいたのよ!」
すごい笑顔だ。
希世子は、喜びに震えていたのだった。
「希世子の髪長いし、あたし横にいたしわかるだろ」
「佐藤君は私を特別気にしているから気づいたのよ! これは愛の力だわ!」
そう思っている。
すると、またスマホがラインを告げた。
「まさか、佐藤君からの愛の告白かしら、フフフ」
画面を見た。
委員長の大石雄馬からだった。
『テレビに河井と三上が映ってたぞ』
「あたしも委員長だ。やっぱ映ってたって」
同じ内容だった。
「委員長も希世子に気づいてたな。これも愛? 委員長って副委員長が好きなのに?」
「目が良いわね」
倫行は愛の力で、委員長は視力で片付けた。




